高橋 良寛さん

  • 2004年早稲田大学法学部卒
  • 法律系出版社入社
  • 2010年入学6期生
  • 2013年司法試験合格

 1 はじめに
  私は、法学部出身で、法律系出版社に勤務しながら6期生として本学に入学しました。全日制の法科大学院生と同等の学習時間を確保することは期待できませんでしたが、本学の先生やチューターの方、修了生の先輩、同期のよき仲間に恵まれ、平成25年3月に本学を修了し、同年9月に司法試験に合格することができました。
  
2 社会人が合格するために
  社会人が勉強にあてることができる時間は平日の夜と休日しかないため、社会人が司法試験に合格するためには、限られた時間をいかに効率よく使い、要領よく勉強するかに尽きると思います。
  そこで、どのような勉強をすべきなのかを考えたところ、やはり同じ社会人という立場で合格した方の意見・ノウハウを聞くのが一番参考になると考え、本学合格者開催の合格者報告会に出席し、自分の学習状況や性格に合っていると感じた合格者の勉強法などを良く聴き、自分なりに分析をしました。
  その結果、私には過去問の徹底的な研究とアウトプットの練習が必要との結論に至りました。 
  しかし、司法試験の問題は良く練られ、奥が深いものであるため、独力だけでは袋小路に入り込んでしまうおそれの方が高いことにも気がつきました。全日制の学生は予備校等で対策をしているという情報も聞きましたが、社会人には予備校に行く時間がありません。
  そこで、本学出身の合格者の多くの方がそうしたように、私も本学のチューターゼミ(特にアウトプット中心のゼミ)、先生方、本学修了生の方を頼ろうと考えました。
  また、自分一人だけでは独りよがりな分析・学習になってしまうと思い、一緒に過去問の分析、アウトプットの練習をしてくれる仲間も必要だと考えました。

3 本学の活用
  本学修了生の方はご自身の経験から、また、本学の先生方、チューターの方々も日頃の授業等を通じて、本学学生の置かれた立場をよく理解して下さいました。
  修了生の方に講義頂いた判例ゼミでは、純粋未修者も参加していたこともあり、予め最低限調べておくべきポイントを事前に提示して頂くなど、学習効果が上がるように工夫して頂き、長期間にわたって懇切丁寧に当該判例の判断枠組みや意義などを分かりやすくご指導を頂きました。慢性的な時間不足をご自身でも経験されたことから、時間のない学生にとって効率のよい学習法を工夫してご指導を頂くなど、大変な配慮を頂きました。
  先生方にも、授業後夜遅くまで、ときには休日などにも、しつこく質問をさせて頂きました。先生方も相当お疲れであったにもかかわらず、快く丁寧に質問に答えて頂きました。授業中は非常に厳しい先生も、研究室にお邪魔すると授業中の厳しさからは想像できないほど優しく、丁寧に質問に答えて下さいました。
  今振り返ると、かなりわがままなお願いを沢山してしまったと思いますが、どの先生方も、快く、そして真剣にご指導して下さいました。
  人と人との関わりである以上、最低限のマナーは必要ですが、学生の置かれている厳しい立場をよく理解して下さっていますので、こちらからの真摯なお願いには可能な限り対応して頂けるのだと実感しました。
  
4 本学の仲間
  私はチューターゼミに参加してアウトプットの練習をする一方で、過去問検討をするために同級生と自主ゼミを組みました。同じ社会人という立場で、生活スタイルもほぼ同じで、(わずかしかない)可処分時間もほぼ同じです。そのため、自主ゼミなどで集まる時間は、皆にとって数少ない貴重な時間を割いて集まっているので、その時間は皆真剣です。ゼミ仲間での温度差はほとんどなく、集中して取り組むことが出来ました。
  社会人の法科大学院ならではと思いますが、皆それぞれ従事している業種が様々であるためか、思考プロセスや文章のスタイルも多様でした。ゼミ仲間の文章を読むと、自分が全く持っていなかった視点であったり、事実の評価の仕方であったりと、その方の職業・経験ならではの視点や事実の捉え方に触れることも度々あり、自分の視点や表現の幅がかなり広がったと思います。また、皆社会経験を積んでいるせいか、事実の評価が非常に巧みだったので、真似してどんどん吸収するように努めました。これはかなり本試験に役立ったと思います。
  また、本学に入学しなければ接することはなかったであろう業種の方々に多く出会うこともでき、勉強以外でも非常に多くのことを学ぶことができました。

5 最後に
  仕事を続けながら法科大学院に通い、そして司法試験に合格することは、社会人にとっては容易なことではありません。私も、本学の方々をはじめ、同期の仲間、職場の方々の心強い支援があったからこそ達成できたのだと痛感しています。
  一方で、そのような困難があったとしても、社会人として積み上げてきた経験を活かして、法曹実務家として社会に貢献すること、自己実現を図ることの魅力もまだまだ大いにあると感じています。
  拙い文章ですが、私の経験が少しでも皆様のご参考になれば幸いです。