本専攻修了者による令和5年度司法試験合格者座談会

 

合格者のプロフィール
 K.R. さん:法学部出⾝。学部時代に旧司法試験の受験歴あり。約20年、民間企業(素材メーカー)の法務部に在籍。2021年4月に既修コースに入学、2023年3⽉に修了、1回目の試験で合格。
 K.M. さん:法学部出身。学部時代は法社会学や法哲学などの基礎法学が好きで、司法試験を意識したことはなかった。ほぼ新卒(24歳)で、2021年4月に既修コースに入学、2023年3⽉に修了、1回目の試験で合格。
 Y.Y. さん:理系大学出身。学部3年の頃に法科大学院への進学を決め、予備校に通い、一度他の法科大学院の既修コースに入学し修了するも、5回の司法試験すべて不合格(2回目までは短答で不合格、3回目から5回目までは論文で不合格)。その後は公務員として勤務。2021年4月に既修コースに入学、2023年3⽉に修了、1回目の試験で合格。
 H.K. さん:法学部出身。別の法科大学院を修了したが、司法試験合格には至らなかった。受験後は、民間企業の法務部門に勤務。2020年4月に未修コースに入学、2023年3月に修了、1回目の試験で合格。
 T.Y. さん:法学部出身。学部時代に旧司法試験受験の経験はあるが記念受験的なものだった。学部卒業後は民間企業に就職したが、その後、法律事務所に転職し現在に至る。2017年4月に未修コースに入学し、2020年3月に修了、4回目の試験で合格。
 O.M. さん:法学部出身。学部時代には司法試験受験歴なし。学部卒業後は地方公務員として勤務。2020年4月に既修コースに入学、2022年3月に修了、2回目の試験で合格。

 

1 入学した経緯を教えてください。
K.R. 学部卒業後、素材メーカーに入社して、司法試験とは無縁の生活をしていましたが、2016年に法務担当として米国の子会社に出向した際、弁護士資格が無いことで非常に悔しい経験をしました。これが原体験となり、まず米国弁護士になることを目標として、現地で働きながら通信制のロースクールで米国法を学びました。修了後、2020年にカリフォルニア州司法試験に合格しました。
他方、帰国後、日本においても、社内外でインハウスの弁護士が増加していることに、大きな変化を感じました。法務のプロフェッショナルとして将来のキャリアの可能性を広げるため、この勢いのまま日本の司法試験にも再挑戦しようと決意し、筑波の門を敲きました。
K.M. 私は、コロナ禍をきっかけに職場で少々理解できないことが起き、網羅的に法律の勉強をしたいと思うようになりました。ちょうど近々で筑波大学ロースクールの個別質問会があるのを見つけ、二人の先生とオンラインでお話しする機会をいただきました。入試はちょっと勉強すれば受かるよ〜とか、軽くて雑な励ましをいただいて、軽い気持ちで挑戦することにしました。
ただ、入試は9月下旬で、その準備としての司法試験の教材を買ったのは8月初旬だったんですよね。記念受験のつもりでした。民法の知識はありましたが、全科目、論文を書ける状態ではありません。本屋で買った教材の模範答案を駆使して、筑波のウェブに掲載されていた過去問2年分を起案し、山を張って主要論点を暗記しました。奇跡的にこの対策が功を奏し、既修コースに合格することができました。もっとも、このような短期間のわずかな対策でしたので、入学した後に地獄を見ることになります。
Y.Y. 私は、前の法科大学院を修了した後に受験した5回目の司法試験で、あと数点が足りずに不合格という悔しい思いをしたことから、公務員として働きながらも司法試験合格を諦めきれずに予備試験を受験していました。
しかし、働きながら一人で勉強しようとするとどうしてもモチベーションが保てず、予備試験では短答での不合格が続きました。そのうちに、専業の受験生時代から時間が経ってしまって、実力がだいぶ落ちてしまったのではないかとか、このままいつまでも勉強を続けることになるのではないかという不安が募っていきました。
また、そもそも法学部出身ではなく、一度は法科大学院を修了したものの、法学の基礎が出来ているという自信がありませんでした。というのも、以前の大学院では、日々の授業についていくのに精一杯の中で、体系的な法学を学ぶというよりも、修了するため・司法試験合格のための勉強を効率的にやろうとしていたからです。その結果、法律の知識にムラがあることを感じていました。
そこで、もう一度法科大学院にチャレンジして、自分の今の実力を知りたい、改めて体系的に法律を学びたい、仲間と一緒に司法試験に挑みたいという思いが高まり、社会人向けの法科大学院である筑波に進むことを決めました。
とはいえ、入学に向けて計画的に準備したというよりも、これで駄目なら諦めようと飛び込む気持ちで入学の門を叩いたという感じです。しかしながら、今思うとこの時の決断は我ながら良い判断だったのではないかと思っています。
H.K. 私も、一度、別の法科大学院を修了して、司法試験にチャレンジしたものの合格できず、仕事をしていてもやり残した感覚というか思いがくすぶっていました。ただ、その一方で、企業で法務担当者として仕事をすることも非常にやりがいを感じていました。そこで、これらを両立することができる、社会人大学院である筑波大学法科大学院への進学を決意しました。
T.Y. 私は、学部卒業後は民間企業に就職しましたが、働いていくうちに法曹を目指したいと考えるようになり、予備試験合格を目指し、自分で教材を買ったり、予備校の講座を申し込んだりしました。しかし、当時勤務していた企業は朝早くから夜遅くまで働くのが常の業界で、勉強時間を確保するのが困難でした。土日も疲労回復にあてるのが精一杯で、予備校の講座も長続きしませんでした。比較的安定した仕事で、ある程度の収入もありましたので、そのまま働き続けるかどうか悩みましたが、自分の力で直接人の役に立てる仕事がしたいという想いが勝り、本気で司法試験を目指すことにしました。また、実務を学ぶことで試験勉強にも役立つだろうと考え、法律事務所のパラリーガルに転職しました。そして、働きながら勉強できる筑波に入学しました。妻と子ども2人がいる私にとっては、収入が無くなる状況は考えられなかったので、これが司法試験合格を目指すために当時採ることができる最善の選択肢でした。
O.M. 私は学部を卒業した後、地方公務員になりました。地方公務員は、異動が多く幅広い職務の経験を積める利点がある一方で、職務内容が変わりやすいので一つの分野で専門性を身に着けることが難しいということがあります。そのような中で、自分の将来を考えるにあたって、専門性を活かして社会に貢献していきたいという強い思いがあり、また、元々法学部出身ということもあって、法律分野で貢献ができるのではと思っていました。そして、そのために法曹資格を取りたいと思うようになりました。ただ、仕事をやめて勉強をするという選択肢は経済的に取りにくく、また、職場の先輩や上司の方々に魅力的な方が多い職場から離れたくないという思いもあり、働きながら通える筑波大学法科大学院に入学を決意しました。
2 在学中、どのように勉強したか、どのように仕事と学業を両⽴させたかをお話しいただけますか
K.R. 在学中は、授業の予習・復習、課題提出、期末試験対策で手一杯の状態でした。他のことに手を出したくてもその余裕はなかったというのが正直なところですが、授業で学ぶ内容は、予習、授業、復習で最低3回は目を通すので記憶に残りやすく、結局は授業を勉強の中心に据えるのが最も効率的だったと思います。また、修了生の方々から、筑波の成績と司法試験の結果は相関関係があると聞いていたので、期末試験では A 評価以上を取得することを常に目標にしていました。
T.Y. 私も未修1、2年次の時は、授業の予習復習と期末試験の準備に追われて、毎日、事前に配布されるレジュメに目を通してから授業に臨み、授業を受けたらノートやレジュメを見返して復習する、この繰り返しでした。未修1、2年次は、インプット中心の授業が多いですし、単位を取得すべき授業が毎日のように入っているので、それ以外の勉強に取り組む時間はほとんどありませんでした。
でも、私にとっては、この勉強だけでは足りませんでした。私は学部時代に単位取得で困った記憶がなく、ロースクールもなんとかなるものと楽観視していたのですが、恥ずかしながら、ロースクールでは進級要件となるGPAを確保するのがやっとでした。ロースクールの期末試験問題は、学部とは全然違って“事案を解決する力”が試されるものだったんですよね。特に起案能力は、センスが良い人ならともかく、私は自分一人の力では身につけることができませんでした。私は自分の成績に危機感を覚え、時間の使い方を見直し、先生が開催してくださるゼミや、チューターゼミに積極的に参加するようにしました。そして、ゼミで添削を受けることを通じて、起案能力を身につけていったように思います。
そして、未修3年次になると、授業でも起案の機会が増えますので、予習復習もさることながら、起案で指摘された点の修正に努めました。加えて、チューターゼミを利用する機会を増やして、アウトプットを意識した勉強に変えていきました。
Y.Y. 私も、在学中は、ほとんど授業とチューターゼミ、自主ゼミで学習を進めていました。
司法試験の直前期になるまで、ロースクールのことを周囲の人や人事労務の部署には話していなかったため、仕事量を調整してもらうことは難しく、また、既修1年目は仕事の関係で茨城県に居住していたので、平日は基本的にオンラインで授業を受けていました。幸い残業があまり多くない部署だったので、授業に遅れることはあまりなかったのですが、平日は予習で手一杯で、復習や課題などは計画的に予定を立てて、日曜日や空いた時間を使って進めていました。
既修2年目には東京に転勤となり、平日も対面で授業に参加することができるようになりました。しかし、転勤後は部署も変わり、慣れない仕事も多かったことから残業も増え、授業への遅刻が多くなってしまいました。遅れた場合は録画された授業の視聴で補い、時には通勤時間を使って視聴していました。
司会 ゼミはいつ頃から参加されていたのですか。
Y.Y. ゼミは、入学当初から他の学生の方と一緒に勉強したいと考えていたので、1年目の時から参加していました。毎週土曜日には登校して授業にも対面で出席し、K.M.さんやK.R.さんを含めた同級生と自主ゼミを実施するようにして、なるべく周囲の方と関わるようにしていました。周りの人の勉強方法を聞いたり授業について雑談をすることは、自分の勉強方法の修正にも役に立ちましたし、授業の復習にもなったと思います。なにより、学校の方との雑談は、仕事と勉強に追われる中での気分転換にも繋がっていたと思うので、周囲の仲間には助けられたと思っています。
H.K. 私は、会社は東京にあるのですが、Y.Y.さんと同じように、遠方(群馬県)に住んでいました。入学したのが2020年4月で、ちょうど、仕事も授業もオンラインが可能になった時でした。ですので、通勤や通学の時間(片道1時間半以上)が不要になり、その分を学業に充てられるようになりました。
私の場合、授業は復習をメインにしていました。授業で、先生が言われたことは素直に聞いていました。各科目とも、授業で先生が言っていたことを、司法試験の当日に見直すまとめノートに落とし込むことで復習をしていました。
また、1年次から同期と自主ゼミを組んで起案していました。この自主ゼミでの気付きも、このまとめノートに落とし込んでいました。これが、後の試験の直前期に繰り返し見直すものになりました。
O.M. 私も、授業は復習を中心にしていました。予習する時間がほとんどなかったからです。その中で合格に直結したと思う勉強は、私の場合、基本論証・基本事案を繰り返すことでした。例えば、民法94条2項類推適用の論証は論証集にも多く載っているのですが、それだけではなくて、民法94条2項がそもそもどういった事例で適用されるか等、典型的な事例を含めて覚えるようにしていました。
勉強と仕事の両立について、私の場合、それに加え育児もあったので、とにかく時間がない状況で、隙間時間にどうやって勉強できるかを常に考えていました。電車の中や昼休み等、少しでも勉強できる時間があれば、一問でも問題を解いたり、論証を思い出すようにしていました。そのために、スマホに論証集等のデータを入れておいたりして、すぐに勉強ができるようにしたり、10分や15分といった短い時間でできる勉強を思いついたら、メモしていました。
K.M. 私が入学したのは2021年で、オンラインで授業が行われていました。ただ、私は、入学と同時に学校の近くに引っ越したので、なるべく学校に行って、対面受講をしていました。当時は、演習科目でも、特に平日はオンラインで受講される方がほとんどで、クラスにいたのは5人程度でした。これによって、多くの方に顔を見せずに発言することができて、小心者には好都合でした。
入学を機に、元々の職場は迷わず退職し、独立したばかりの元上司の司法書士の下でアルバイトを始めました。既修2年に進級する時点で、1回目の受験で合格するとは思えない実力でしたので、勉強時間を確保するために出勤日を大幅に減らしました。ですので、私は仕事と学業の両立をしていません。勉強だけだと精神的に追い込まれる不安があったので、細々続けさせてもらった程度でした。
司会 ゼミは組んでいたのですか。
K.M. 毎週予備試験や司法試験の過去問を起案して見せ合う自主ゼミを、Y.Y.さんとK.R.さん達同級生とやっていました。同級生はみなさん優しくて、私から学べるものは何もないのですが、仲良くしてくれました。その時間の中で、授業で分からなかったことを質問したり、期末テストの過去問の解き方を教わったりすることができました。お仕事で特定の法律を使っている方もいらっしゃったので、本当に頼りになりました。
K.R. K.M.さんがおっしゃる通り、私たちは、入学後、同学年の既修生6 名で自主ゼミを組み、司法試験の直前まで、週1回のペースで予備試験や司法試験の過去問等の起案をしていました。また、ゼミのメンバーとは、キャンパス外でも親しくさせていただき、有志でマラソン大会に参加したり、土曜の授業後にたまに飲みに行ったりしていました。在学中や修了後を通じて、苦しい時期でも勉強仲間の存在が精神的な支えになりました。
司会 授業はオンラインで参加されていたのですか。
K.R. 私も、K.M.さん同様、できる限り教室に来て対面で授業を受けることを心がけました。教室に来ている学生は、総じてモチベーションが高く、成績も良い人が多かったので、同じ空間で勉強することで刺激を受けましたし、対面だと先生方にも質問し易かったです。
もっとも、仕事と学業の両立はしんどかったです。授業がある日は残業ができないので、朝7時台に早出するか週末に対応するなどして調整しました。ただ、コロナ禍で出張や飲み会が制限され、在宅勤務の割合も多かったことは、両立には追い風になったと思います。
とはいえ、平日の帰宅時間は22時以降、週末は朝から晩まで大学の授業か自習室での勉強という生活が2年間続きましたので、家事・育児の面で、家族(妻・6歳の娘)にかなり負担をかけました。家族の理解と支援がなければ両立は難しかったと思います。
T.Y. 私も、家族のさまざまなことに対する理解が必須と思います。例えば、金銭的には、筑波は私大よりやや安価とはいえ、入学金や毎年の学費・教材費など、家計を圧迫することは事実です。私は結局奨学金の貸与を受けましたが、その後の返済もありますし、家族のライフプランに影響を与えることは間違いありませんので、しっかり話をしておくことが重要と思います。
また、職場の理解もとても重要と思います。私は入学が決まってすぐ、働きながらロースクールに通いたいという意思を職場に伝え、平日18時20分から始まる授業にできるだけ遅刻しないようにするため、勤務時間を30分前倒しする時差出勤をさせてもらえるようお願いしていました。加えて、本来は土日出勤もある職場なのですが、土曜の授業に出席するため、平日勤務のみにしてくれました。このような職場の配慮がなければ、ロースクールでの授業や単位取得はもっと困難なものになったと思います。
H.K. 私も、職場では、直属の上司には法科大学院に通うことを報告していました。そのおかげで、残業に代わり早出等で原則対応することができていたので、授業にはほぼ出席することができていました。この点では恵まれていたと思います。
3 ロースクールの提供するものでよかったもの、足りなかったもの等を教えてください
Y.Y. まず、各科目の演習の授業は自分の理解の程度を知る上で役立ちました。授業では質疑応答を交えながら進めるため、予習の段階ではある程度理解しているつもりが質疑応答のやり取りを経て正しい理解でないことに気付かされたり、アウトプットできる程度に咀嚼できていないことを感じることができました。そのような部分を重点的に補って試験に向けて対策することで、実力を高めることができたのではないかと思います。
また、授業で用いられたレジュメは直前も復習に使っておりました。体系的にまとまっており、レジュメを見返すと授業での質疑応答のやり取りが思い出され、知識の掘り返しができたと思っています。
さらに、共用のゼミ室が手軽に利用できたことも自主ゼミの実施に役立ちました。ウェブで簡単に利用の予約ができ、他の学生の利用状況も分かるので、柔軟に自主ゼミの実施を運営することができました。
H.K. 私も、授業は良かったと思います。専業受験生よりも可処分時間の少ない社会人が、いかに効率良く学べるかを意識してくれているように思いました。例えば、レジュメは、司法試験合格のための必要な知識が簡潔にまとめられていましたし、授業は、学説の対立等の学術的な議論に終始することなく、司法試験を意識し、具体的事例をいかに処理することになるかという点に重きを置いて行ってくれていたように思います。
あと、チューターゼミも良かったです。司法試験合格者の視点で、司法試験に合格するために必要な知識や能力(タイムマネジメント等)を教えてくれました。特に、相場観(ここまで書かなくても合格はできる等)は、勉強する範囲を広げ過ぎることを防いでくれ、重要な部分に注力したり、モチベーションの低下を防止したりしてくれたと思います。
司会 足りなかった点はいかがでしょうか。
H.K. 特に足りないということはなかったと思いますが、ただ、純粋未修者にとっては、基礎ゼミ以外にも、折に触れて起案の書き方を練習する機会があると良いのではないかと思います。
T.Y. 私も、先生方が工夫を凝らしてわかりやすく作成してくださった授業レジュメはよかったと思います。先生によってそれぞれ特徴があり、内容が網羅されているものから要点を絞ったものまで多種多様でしたが、科目によっては、本当に司法試験本番の直前期まで目を通していたレジュメもあるくらい活用させていただきました。
また、私もチューターゼミには大変お世話になりました。私はロースクール入学同期の中で一番チューターゼミを活用させてもらったという自信があります。先ほどお話ししたように、未修1・2年次では、期末試験だけでは足りない起案の機会をチューターゼミで補っていました。チューターに添削してもらうことで自分の起案の足りないところが見えてきますし、ここで事例問題における起案の仕方を学ばなければ、期末試験もボロボロで進級もままならなかったと思います。加えて、未修3年次では個別型チューターゼミも実施していただきました。ゼミの内容、日程や頻度を学生の要望にできるだけ沿った形で開催していただけましたし、ゼミを組むことで強制的に起案の機会を設けることができました。人によっては学生同士でゼミを組むこともあるかもしれませんが、チューターが入ってくださるか否かで、その効果は段違いです。学生同士だと疑問点も投げっぱなしになってしまいがちですが、チューターが適切に指導・回答してくださる環境は本当にありがたかったです。
また、施設の面でいうと、24時間利用可能の自習室は在学中によく使っていました。私は学校から自宅まで通学に2時間弱かかっていましたので、特に期末試験前などは自宅に帰る時間ももったいないと思い、近くの銭湯を利用しながら、勉強しつつ自習室に寝泊りさせてもらったこともありました。在校生に真似をしてほしいとは思いませんが、こんな苦労話も、合格した今となってはいい思い出です。
このような学校生活を送っていたので、足りなかったものを強いて言えば学生用の仮眠室やシャワー室でしょうか。その他は特に不自由なく学校生活を送れたと思います。
K.R. 確かに、筑波は、演習科目やゼミを中心とする論文指導が非常に充実していると思います。先生方の懇切丁寧なご指導のお陰で、着実に起案の実力が付くのを感じました。他の学生の優秀起案からも学ぶことが多かったです。筑波に入らず一人で勉強していたら短期間での合格は難しかったと思います。
足りなかったものはあまり思い浮かびませんが、あくまで私見ですが、司法試験科目である実定法基礎科目の授業方法はオンデマンドよりも、できれば対面かオンラインの方が良いのではないかと思います。たしかに基本的に座学ですからライブに拘る必然性はありませんし、学生としてもオンデマンドの方が正直はるかに楽です。しかし、録画授業だと、どうしてもライブの授業に比べて緊張感がありませんし、授業時間後に分からないことを先生に訊いたり学生同士で教え合ったりする機会にも乏しくなるように思います。教える側の先生にとっても、学生がちゃんと理解しているかどうか、反応が見えないのは不安ではないかとも思います。
K.M. 直接的にロースクールが提供するものではないかもしれませんが、私は優秀な同級生に引っ張り上げてもらって合格に達した人間ですので、まず素晴らしい出会いの機会を頂いたことに感謝しています。私が司法試験に1回目で合格できたのは、優秀な仲間がいたからです。入学当初から、この人達に着いていけば合格できるな、とは思っていましたが、本当でした。
また、自主ゼミ、チューターゼミの中で、起案を見て、丁寧にご指導くださった先生方には感謝してもしきれません。他の大学でも、先生が主導するゼミがあったりすると聞きます。筑波は、一緒に勉強したい仲間を集めて、見て欲しい先生に学生が交渉して見てもらう形で発足するゼミがあります。自分に必要なものを必要なだけいただく姿勢です。社会人経験があるからこのような交渉ができるのだと思います。
O.M. 私も、ロースクールで仕事をしながら、加えて子育て等もしながら、司法試験を目指すという同じ境遇の方々と知り合えたことは、とてもよかったです。そもそも、司法試験の受験生・合格者の大多数は専業受験生、すなわち学部卒業後にロースクールに入ってそのまま司法試験を受ける(そして合格する)人たちです。そのため、働きながら勉強をしている社会人受験生は、どうしても孤立しがちです。ロースクールの学生が集まる行事に参加しても、社会人をしながら司法試験を目指している人に会えることは多くはありません。そのような中で、同じ境遇にいる人に会える、というか、基本的にはそのような人しかいない筑波大学のロースクールはとても良かったです。
また、ロースクールの授業レジュメも、とても完成度が高く良かったです。市販の予備校本以上に司法試験の勉強を支えてくれました。
他方、足りなかった点ですが、既修者と未修者の交流の場があったら良かったように思います。自分自身、既修で入ったのですが、入学して最初に受けることになる授業で、未修2年生と一緒になって、最初は戸惑いました。(入学年度が異なるが授業で合流する)既修生と未修生が知り合える機会が、事前にあったら良かったと思います。
4 ロースクール修了後から本試験まで、どのように過ごされましたか
K.R. 本試験日程が 5 月から 7 月に変更されたので、授業終了から本番まで 7カ月間あります。ロースクールの授業が終わると相当の解放感があり、油断すると勉強量が落ちます。半年以上、一人で高いテンションを維持して勉強するのは難しいと思いました。そこで、自主ゼミ、エクステンション・プログラム、予備校の講座、模試などを組み合わせてペースメーカーとし、とにかく本番までに気持ちが弛緩しないように気を付けました。
夜間・週末には、ロースクールの自習室に籠って勉強しました。本番を翌年に控えた年末は帰省せず、大晦日も元旦も自習室で勉強しました。
論文対策として、1月から、ロースクールの提供するエクステンション・プログラムを受講しました。過去問の起案について各科目で質の高い指導を受けられました。起案の締切がペースメーカーになりますし、ここで浚った論点が本試験に出たものもありますので、受けてよかったと思います。また、選択科目の経済法のチューターゼミで本試験10年分の起案をしたほか、修了後も自主ゼミで本試験の過去問を週に1回起案しました。
また、短答対策として、修了式の翌週(3 月末)から、K.M.さんやY.Y.さんの他、修了生の有志数名で、毎朝 6 時 30 分から 1 時間、朝勉強会をやりました。LINE に繋いで、カメラ ON/音声 OFF でそれぞれ黙々と短答を解くという方法です。本試験当日の朝まで約100日続けました。短答をこつこつ進めるのに非常に効果的だったと思います。教材は「短答過去問パーフェクト」を使いました。前年の予備試験までに 1 周、司法試験までにもう 1周、全問解きました。その後は間違えた問題のみ解き直して、誤答がなくなるまで繰り返しました。
この時期のインプットは、色々試行錯誤しましたが、各科目の百選に搭載されている判例を精読して、自分なりに優先度のランクをつけながら一つ一つ潰していく勉強方法に落ち着きました。過去問の演習を沢山こなした後に改めて判例に戻ることで、理解がより深まっていく実感がありました。
本番のシミュレーションとして、5 月のTKC模試を受験しました。ただ、仕事で平日休めなかったので在宅受験でした。K.M.さんとY.Y.さんに試験監督役をお願いして、ゴールデンウィークにロースクールの自習室で、本番と同じ時間割で時間を計って問題を解きました。
直前期は、7 月 1 日から本試験最終日まで会社からお休みをいただき、K.M.さんと自習室で机を並べて、本番前日まで追い込みをしました。本番までの直前10 日間は、朝 6 時 30 分に自習室に来て、夜 21 時頃まで勉強しました。
H.K. 私も、在学中から続けていた自主ゼミをペースメーカーとして6月上旬まで続け、必ず週に1通は起案をするようにしていました。また、最低でも1日1時間は、短答式試験の過去問を解いていました。あと、私も5月に模試を受験しました。授業で先生が言っていたことと、自主ゼミで得た気づきを落とし込んで作成していたまとめノートを見直していました。
Y.Y. 私も、ロースクール修了後は授業がなくなり一人での勉強時間が多くなりますが、自主ゼミ、エクステンションプログラム、チューターゼミ等を利用して、起案の機会を確保しつつ周囲との交流を続けていました。試験が近づくにつれ、精神的なプレッシャーを感じたり自分の立ち位置が不安になるので、周囲との繋がりは心強かったです。
全国統一模試の時期であるゴールデンウイークが過ぎると本格的に試験対策となり、特に私は模試で帰ってきた成績が芳しくなかったので、毎日学校に行くようにしていました。学校に行くとK.M.さんやK.R.さんなど一緒に試験を受ける同期が来ていて、毎日顔を合わせることが励みになりました。
試験対策としては、基本的に短答も論文も過去問を使って勉強をしました。
短答対策は、短答の過去問を繰り返し解くだけの単純な方法でしたが、一人ではなかなか集中して取り組むことができなかったので、私も、K.R.さんと一緒に朝勉強会をしていました。起きれずに参加できない日もありましたが、継続して短答対策の時間を作ることで知識も定着し、気持ちにも余裕ができましたし、試験前の生活リズムを作る上でも良かったと思います。
以前の司法試験でうまくいかなかった時と今回での試験対策で大きく異なるところは、周囲の人を頼り、助け合いながら進めたことだと思います。これから試験を受ける方々は、一人ではなく周囲と協力して乗り切って欲しいと思います。
K.M. 私の勉強の拠点は在学中と同じく自習室で、自習室を利用している先輩方、同級生と励まし合いながら長時間勉強するようになりました。私は、午前中に自宅で短答対策をして、午後に自習室で論文対策をしていました。
筑波の修了式後の飲み会で、短答対策をするようにとOGに強く言われ、私も朝勉強会に参加していました。これは司法試験の最終日まで毎日続きました。私はロースクールでできた友達が大好きなので、毎朝友達の顔が見れて嬉しかったし、勉強のやる気が出ない日はありませんでした。毎朝必ず1時間は勉強できて、試験当日も変わらず顔が見れて緊張せずに受験できました。
司法試験自体は辛かったですが、6時半に起きてビデオ電話に出たり、夕方自習室にいれば、毎日(本当に毎日)、尊敬できる(本当に尊敬できる)仲間に会える環境に身を置けたので、直前の3月から7月は本当に楽しい日々でした。
7月に入ってからは、K.R.さんが先ほどお話しなさったように、有給を取って自習室にいてくださったので、朝6時半から、夜9時まで一緒に勉強できて、この頃が一番楽しかったです。
O.M. 私自身は2回目の受験でした。1回目の不合格がわかってから、合格者に会って話を聞いたりしていました。そして、合格者の方のお話を聞いていると、①選択科目や択一の勉強がほとんどできていなかったこと、②総じて時間が本当に足りていなかったこと、③大きく落ち込んでしまった科目(特に憲法)があったことが主な敗因とわかりました。そのため、①択一・選択科目について、1日解く問題数を決めて、必ず解く②自分の生活を見直すと同時に、妻や親戚を頼り子供の面倒を見てもらい、1日の勉強時間を増やしたりしました。また、③憲法等、特に点数の悪かった科目は、合格者にアドバイスを聞くとともに、予備校が出しているA答案を分析した本を利用してどういった書き方が評価されるのかも研究しました。
上記に加え、月に1回程度、筑波の同期と集まり、答案を書いて合格者の方に添削をしてもらったりしていました。この集まりでは、自分の答案を合格者に見てもらい客観的に分析をしてもらうことができ特に有意義でした。また、同じ目標を目指している同期にあって話をすることでモチベーションの維持にもつながると同時に、勉強の息抜きにもなりました。
このように、合格者の方にあったり、自分で分析をしたりすることで、勉強法を確立でき、成績も上げることができました。卒業をしてからも、特に、不合格になってからも、同期や他の色々な方々からサポートをしてもらえたことは、とても心の支えになりました。筑波のこういったつながりがなければ、自分の合格は難しかったと思います。
T.Y. 私が初めて受験した本試験は令和2年で、コロナ禍の緊急事態宣言により、試験日が5月から8月に延期になりました。受験生にとってみれば、距離が決まっていたマラソンのゴールが目の前で遠くになったようなものです。社会人受験生であれば勉強時間が伸びたと思って喜ぶべきだったのかもしれませんが、私にはモチベーションの維持が難しかったんですよね。私の当時の実力からしたら、5月に受けようと8月に受けようと不合格だったことには変わりなかったと思いますが、もっと追い込んで勉強できていればよかったなと思います。
翌年の令和3年は、本試験の実施が5月に戻ったので、今度は合格発表から次の試験までの期間が短くなりました。独学で司法試験の過去問と予備校の論証集を中心に勉強していましたが、起案を他人に添削してもらう機会がほとんどなく、自分で出題趣旨と採点実感を見て分析する程度でした。しかし、これでは自分の弱点の客観的な分析ができておらず、案の定、2回目の試験も不合格でした。
そこで、3年目・4年目は、縁あって外部の司法試験対策ゼミに入会して勉強することにしました。そこでの勉強はとにかく過去問中心で、起案をしたら添削を受け、トライアンドエラーを繰り返しました。加えて、自分の弱点克服のために予備校の短文事例問題集を繰り返し解く、インプットは予備校が出版している本を活用する、という至ってシンプルな勉強方法に落ち着いていきました。結果として、無駄がそぎ落とされた、合格に必要十分な勉強ができていたのだと思います。また、この間、筑波の姫野先生や森田先生にも、個別に起案の添削をしていただきました。4回目の受験ともなると、ロースクール同期の多くは合格し、自分が取り残された感覚になっていきます。私も卒業してから3年以上が経過し、ロースクールとの関係が疎遠になっていくなかでも、親切かつ丁寧に快く添削してくださったり質問に答えてくださった両先生には、この場を借りて御礼を申し上げたいです。
5 これからのビジョンと後輩へのメッセージをお願いします
K.R. 会社を休職して第77期の司法修習に参加予定です。修習後は復職し、日米のダブルライセンスを活かして、国内外の企業法務の現場で更に多様な経験を積み、将来は経営法務人材として、法務組織をリードできる人物になりたいです。
後輩へのメッセージですが、受験した肌感覚として、合格率45%という数字の見た目以上に実際の競争は厳しく、特に勉強の絶対量が少なくなりがちな社会人は、相当頑張らないと、同等以上に努力してきた母集団の中で相対上位の成績を取るのは難しいと感じました。仕事と学業の両立は本当に大変ですが、先ほど、家族や職場の理解が重要というお話が出ましたが、本当に、周囲の理解・支援を得ながら一定の勉強量を継続的に確保することが肝ではないかと思います。
後輩の皆様がこの筑波の素晴らしい学習環境において、勉強仲間と共に充実した勉強生活を送り、今後の司法試験に合格されることを、心より願っています。
K.M. 私も、今年修習に行って、司法試験に受かっていなければ出来ない仕事で社会に貢献したいと思っています。いつの間にか1回目合格しか眼中にない状態になっていましたが、そもそも勉強がしたくて入学しただけだったので、今後のビジョンといっても、まだ具体的には決まっていません。
後輩へのメッセージですが、私のような若者が、筑波に入学するようなしっかりとした社会人に言えることはあまりありません。ただ、一人で予備試験に挑戦し続ける傍ら、ロースクールで仲間と司法試験を目指し、最終合格の可能性を広げるのは手だと思います。私がそうであったように、これから入学する方々がすてきな仲間に恵まれることを祈っています。
O.M. 私は、これまで勤めてきた公務員を辞めて、法律事務所で働くことに決めました。その方が、より高い専門性をもって、依頼者に対応したり助言したりすることで、社会に大きく貢献できる可能性があると考えたからです。ただ、自治体に勤めていた経験も活かせるように、そういった法務にも引き続きかかわれるような活動もしていきたいと考えています。
これから司法試験を受験される筑波の方々へのメッセージですが、司法試験は4日間という精神的にも身体的にも厳しい試験です。そして、どれだけ勉強をしても当日わからない問題があり、とても苦しい4日間になってしまうかもしれません。ただ、自分がロースクールの仲間と勉強してきたことをしっかりと思い出して、自分なりにある程度書き切ることができれば必ず受かる試験になっていると思います。試験日までこの勉強で大丈夫かとか、本当に受かるかととかいろいろ心配になるかもしれませんが、ぜひ、自分を信じて、そして、 これまで筑波の仲間とやってきたことを信じて、全力で頑張ってください。応援しています。
Y.Y. 私も司法修習に行った後は、公務員として培った経験を活かしつつ、弁護士として活躍したいと考えています。
筑波の学生は法務を身近に感じる機会が多かったり、実際に弁護士として働いている方と接点があったりするため、比較的法曹の仕事を良く知っている人が多いと思います。一方で、既に民間企業等で法務のお仕事をされている方だと、いざ受かってからのキャリアに迷いを持っている方も少なくないのではないかと思います。
私自身の経験としても、どのような分野に取り組みたいか、どういった弁護士になりたいかのビジョンが、在学中は曖昧だったこともあり、受かったら今の仕事を辞めて弁護士になろうと漠然と思いつつ、折角受かっても自分に弁護士の仕事はできるのだろうか、就職できなかったらどうしようかなどと試験の前から考えることもありました。
しかし、試験が終わってからでも自分のキャリアをじっくり考える時間はありましたし、いろんな事務所に行ってみて実際に働いている方々のお話を聞いていると、少しずつ今の自分と法曹として働く自分が繋がっていくような感覚があります。そのような時間を経て、現在は事業再生に取り組む法律事務所にご縁をいただいており、その分野で活躍したいと考えています。
これから試験を受ける方々においても、今は全力で試験の合格を目指し、受かってからどのようにキャリアを形成していくのを考えてもいいのではないかと個人的には考えています。
また、私は何度か申し上げたとおり、一人ではモチベーションがなかなか保てず、ゼミや普段からの交流で同期達に助けられた点が非常に大きいです。この点は、今日、他の合格者の方々もみなさんおっしゃられていたと思います。逆に言えば、一人で試験に臨んでいたら今も合格ができずに苦しんでいたと思います。
筑波の学生は多様なバックグラウンドを持つ方々ばかりです。試験が終わった後も一緒に過酷な試験を駆け抜けた仲間達との絆は残るので、積極的に関わりを持って損をすることはないと思います。一人で勉強している方は、いつも自習室で見掛ける方にたまには声を掛けてみるなどして、直前期に助け合いながら合格を目指して進める仲間を見つけて欲しいと思います。試験に惜しくも不合格となり一緒に勉強する仲間が見つからない人は、既に合格者したかつての同期や先輩、仮に後輩であっても気にせず頼って欲しいと思います。なにより、一人で勉強するより仲間と勉強した方が楽しいと思うからです。
社会人として働きながら学生生活を送ることを決めた行動力を持ち、司法試験に挑もうとする勇気を持つ皆様なら、その先にある道は必ず合格へと続いていると思っています。 皆さんの合格と、その後のご活躍をお祈りしております。
H.K. 私も、できれば今年修習へ行きたいと考えていますが、比較的最近、別の民間企業に転職をしたばかりのため、難しいかなと思っています。将来的には、弁護士の資格を取得した上で、民間企業の法務部門で働きたいと考えています。
後輩へのメッセージですが、まず、入学を検討されている方には、仕事や家庭に加えて、ロースクールに通うということは、相当な覚悟が必要ということと、でも、働きながら法曹資格を取得したいと本気で思うのなら、その可能性を最も高めてくれる方法は、筑波大学法科大学院を修了することだと今改めて思うので、ぜひ筑波の門をたたいてみてください、ということをお伝えしたいです。
既に入学されている方には、Y.Y.さんやK.M.さんや他のみなさんがすでにおっしゃっておられます通り、私も仲間と頑張ることの重要性を強調したいです。同じ境遇の仲間がいてくれることで、勉強に対するモチベーションを維持できると思います。私自身も、1年次から同級生と自主ゼミを行ってきて、ゼミのメンバーが休まず起案を提出している姿にやる気をもらって、辛いときは励まし合って、諦めずに勉強を続けることができました。皆さんもぜひ、同級生の横の繋がりや先輩後輩との縦の繋がりを大切にして、頑張っていただければと思います。
T.Y. 私は、合格したらすぐに司法修習に行くと職場には伝えていたので、77期として修習に参加する予定です。無事に司法修習を終えたら、弁護士として働きたいと思っています。現在勤めている法律事務所には私の勉強を応援していただいたので、恩返しの意味も込めて、今度は弁護士として戻ってきたいと思っています。
ただ、特にロースクールに入学してから司法試験に合格するまでは勉強のことしか考えてきませんでしたので、自分の視野がものすごく狭くなっていると感じます。これから司法修習にいって色々な出会いもあると思います。いまの法律事務所の経営理念には共感していますが、弁護士として働くにあたって、本当に自分とマッチした事務所かどうかという点はしっかり見極めたいとも思っています。
筑波ローに入学された皆さんや、これから入学する皆さんというのは、多くが社会人として仕事があったり、家庭があったりする方だと思います。最近の日本の風潮は、どこか諦めムードが漂っていて、何かに挑戦すること自体が否定されがちです。特に私のように転職によって収入が激減し、家族との時間を犠牲にしてまで挑戦するような人間は、単なる物好きだと思われているような気さえします。それでも、司法試験に挑戦しようと思った皆さんは、自分のことを誇りに思ってほしいです。
私は、成績が伸び悩み、何度も不合格を体験して、自分の挑戦自体が無駄だったのではないかと心が折れかけました。しかし、そんな私を支えてくれたのは、家族や職場の方たちはもちろんのこと、ロースクールで得たかけがえのない仲間です。これは、予備試験ルートで合格した人には得ることができない貴重な財産です。また、私が司法試験に挑戦する姿を見て「自分も励まされて目標に向かって頑張れた」と声をかけてくださった方もいます。もちろん私は自分の合格を目指して必死に勉強していただけですが、そう受け止めてくれる人がいたことは素直に嬉しかったです。振り返ると大変なこともたくさんありましたが、このような貴重な出会いがあっただけでも、司法試験に挑戦して本当によかったと思っています。
そして私は、一歩ずつでも正しい努力を続けていれば、時間はかかっても司法試験に合格できるということを証明できました。皆さんにも、合格発表を見て自分の受験番号を見つけたときの、震えるほどの感動を味わってほしいです。あの瞬間は、きっと一生忘れないと思います。皆さんのご健闘をお祈りいたします。