令和5年11⽉司法試験合格 N.H.さん

2018年4⽉ 筑波⼤学法科⼤学院未修コース⼊学(入学と同時に休学)
2020年4月 2年間の休学を経て復学(長期履修)

2023年11⽉ 司法試験合格(在学中合格)
2024年3⽉ 筑波⼤学法科⼤学院未修コース修了

1.法科大学院入学の経緯

 法学部在学中に行政書士試験に合格,大学卒業後比較的すぐに司法書士試験に合格できたことから,調子に乗り勢いに任せて旧司法試験を受験しましたが,論文式試験総合D(3400番台)で不合格,これは生半可な気持ちで受けていい試験ではないと判断して即撤退しました。法律事務所に司法書士として在籍して企業法務に携わる中,「もう一度挑戦してみたらどうか」との事務所の代表弁護士からの薦めや,夫からの後押しを受け,最後のチャンスかもしれないと思い,改めて法曹を目指す決意をしました。

2.学生生活

 長らく「受験勉強」から遠ざかっていたこともあり,入学後に改めて一から勉強しようと考え,予備校等は特に利用せずに筑波大学法科大学院の入試に臨みました。未修コースに合格しましたが,6月に出産予定であったことから,2018年4月の入学と同時に2年間休学し,家族になるべく負担をかけないようにと長期履修制度を利用する前提で2020年4月に復学しました。

復学したものの,新型コロナウイルスが猛威を振るい,授業はすべて録画配信されることとなり,「ひとりぼっち」の学生生活を余儀なくされました。そして緊急事態宣言の発令により保育園が休園に。1歳10ヶ月(当時)の子供の面倒をみながらのテレワークで心身ともにボロボロ,やっとのことで授業を録画視聴しますが頭に入るわけもなく,「こんな生活続けられるんだろうか」と絶望的な心境に陥っていました。5か月程過ぎた頃,既に自主ゼミを組んでいらっしゃった同級生の方から,自主ゼミに参加しませんかとのメールを頂きました。「この機会を逃してはいけない」と直感し,以後本試験直前まで自主ゼミに参加させて頂くことになりました。最初は民法から始まった自主ゼミは,最終的には選択科目を除いた全科目を網羅しました。志を同じくする友人の存在は絶大で,この自主ゼミに参加できたことが司法試験の合格に繋がったと確信しています。

幼児を抱えての受験生活は,パートナーの協力が必要不可欠であり,パートナーが倒れてしまえばそこですべてが終わってしまいます。夫にかかる負担を少しでも軽減し,家族との時間も大切にするためには,週末のすべてを勉強にかけるわけにはいきません。また,子供を寝かしつける際に一緒に寝落ちてしまうこともしばしばで,0時過ぎに起きて4時頃まで勉強するなど,なんとか勉強時間を確保しようとしましたが,1分も勉強できないまま一日を終えることも多々ありました。自分を追い詰めすぎて身体を壊してしまっては元も子もないので,毎日勉強すること・理想を追求すること・好成績を修めることは諦め,1週間で1500分~1800分(25時間~30時間)勉強できればOKと割り切ることにしました。年間の勉強時間は1300~1500時間程度となる計算ですので,専業受験生と比較すると勉強時間の不足は否めませんが,社会人受験生である以上,合理化を図るほかありません。20分程の通勤時間は,ローライブラリーを利用した短答式の勉強に充てました。授業の予習は必要最小限にとどめ,2年次以降は可能な限りオンサイトで授業に出席し,理解が及ばないところがあれば積極的に質問する等(一部の先生方にはストーカーのように思われていたかもしれません・・・),疑問をなるべく自宅に持ち帰らないよう集中して授業を受けることを心掛け,最終的な目標である司法試験合格のための勉強時間を最大限確保することに努めました。確保した勉強時間の多くは自主ゼミ・チューターゼミへの参加や過去問の起案等に配分し,可能な限りアウトプットの機会をもつようにしました。

3.在学中受験

 長期履修生のため2024年の本試験受験を目指していましたが,家族のためにはむしろ長期履修などせず少しでも早く受験生活を終えることを目指すべきだったのではないかという後悔の念,自主ゼミの友人達と一緒に受験できないことへの寂しさを抱えていましたので,司法試験制度の変更により導入されることになった在学中受験に挑戦することにしました。在学中受験の資格を取得するために,長期履修3年目は,残っていた応用科目とすべての総合演習科目を履修するというかなりタイトなスケジュールを組まざるを得ませんでしたが,結果的には奏効したように思います。新型コロナウイルス感染症やインフルエンザに罹患する等のハプニングもあったものの,無事に必要単位を取得し,2023年の在学中受験資格を得ることができました。

在学中受験は,本試験の直前であっても通常の授業や期末試験があるというデメリットもありますが,1年でも早く受験されたい方には有用な制度です。私にとっては,家族のために少しでも受験期間を短くすること・共に学んできた友人達と一緒に本試験を受けることがモチベーションを保つ上で非常に重要でしたので,在学中受験制度を利用できたことはとても幸運だったと思います。

本試験前日は極度の緊張から「今年はだめかもしれない」と弱気になっていましたが,「何年間も準備してきてこの一週間で終わると思えば頑張れるでしょ」との夫の言葉に励まされ,必ず1回で合格しようと気合を入れ直し,最後まで頑張ることができました。

4. 最後に

 仕事や家庭と試験勉強との両立は一筋縄ではいかないところがあり,何かを諦めたり犠牲にしなければならないことも多々あるかと思います。受験生活は苦労の連続といえるかもしれません。そうであるとしても,筑波大学法科大学院には,仕事や家庭を大切にしつつ司法試験に挑戦できるという素晴らしい環境が整えられています。そして,あたたかく見守ってくださり,時には厳しくご指導くださる諸先生方,切磋琢磨し合える得難い友人の皆様がいらっしゃいます。司法試験合格を目指す社会人の方々におかれましては,筑波大学法科大学院経由での司法試験受験も選択肢の一つとしてご検討頂ければと思います。法曹資格の取得を目指される社会人の方々が一人でも多く合格され,法曹の担い手としてご活躍されますよう,心よりご祈念申し上げます。