2020年4⽉ 筑波⼤学法科⼤学院未修コース⼊学
2023年3⽉ 筑波⼤学法科⼤学院未修コース修了
2023年11⽉ 司法試験合格
1.はじめに
私は、筑波大学法科大学院(以下「筑波LS」とします)に入学する前から卒業後にかけて、総合電機メーカーの法務部門で契約書作成・査読、法律相談対応、紛争解決対応等を業務として行っておりました。
ただ、大学では法学部法律学科であったにもかかわらず、体系的な法律の勉強を十分に行ったと言い切れるほどの知識や自信がなく、せっかく業務で法律を扱うのであれば、法的知識や法的思考を自分の強みとするべく専門性を高めたいと考えるようになり、弁護士を目指しました。
2.司法試験合格に向けた勉強時間の確保について
一般論として、日中働いている社会人にとって司法試験の勉強時間を確保することは相当に難しいことだと思います。ただ、ある程度は勉強時間を確保しなければどれだけ勉強の質(集中力、良い指導等)を上げても限界があるのも事実です。受験生それぞれのバックグラウンドや能力で大きく左右されるとは思いますが、様々な書籍やインターネット上の情報をまとめると、司法試験合格には概ね6000~10000時間が必要とされています(とはいえ、中には3000~4000時間で合格されている方もいらっしゃるので、あくまで目安です)。
入学当初より、私が人の話を瞬時に理解したり、一回聞いたり、見たことを確実に記憶できる力に秀でているわけでないことは自覚していたので、せめて合格者の平均程度の勉強時間は確保しなければならず、8000時間の確保は必須だと考えていました。結果的に、私が司法試験の勉強を本格的に始めたのは筑波LSに入学した2020年4月で、司法試験最終日(2023年7月16日)までの3年3ヶ月で概ね予定どおり、7950時間を費やしました(平均1日6~7時間〔≒週40時間〕)。
一日のスケジュールとしては、平日ですと、朝4~5時に起床、8時頃まで自習、9時から18時過ぎまでに仕事に従事、18時20分から21時まで筑波LSの授業、22時前まで復習やゼミ参加して、就寝するといった生活でした。土曜日は、朝4~5時に起床、8時半まで自習、8時半から10時頃までゼミ参加、10時20分から16時半か18時前まで筑波LSの授業、20時から22時頃まで自習。日曜日は、ほぼ終日勉強をするという生活でした。
なお、筑波LSの学生には、小さいお子さんと生活されている方も一定数いらっしゃいました。私のように土日も含めてほぼ全てを司法試験合格のために費やすのではなく、朝から17時までは勉強するが、それ以降は家族の時間にするとメリハリをつけて勉強されている方もしっかりと合格されています。
3.筑波LSに入学するメリットについて
⑴総論
本サイトをご覧になっている皆さまは、司法試験の勉強をされている又は今からし始めようかと考えていて、夜間のロースクールで勉強するために筑波LSをその選択肢に入れようかご検討されている方々かと存じます。社会人で司法試験合格を目指すには、予備試験に合格して、司法試験受験資格を得るというルートを選択することもできるわけですが、私としては、筑波LSに入学したからこそ司法試験に合格できたと考えており、筑波LSに入学するメリットを私なりにお伝えしたいと思います。
具体的には、筑波LSは、①先生方の質が高いこと、②様々なバックグラウンドをお持ちの学生との交流があること、③施設が必要十分備わっており、自習や自主ゼミを快適に行えることが強みであり、入学すると享受できるメリットだと考えております。
⑵①先生方の質が高いこと
専門分野の学術面で強みをもたれている先生方、実務家教員として弁護士実務に精通されている先生方に師事することができます。もちろん学問としての法律を学ぶことも大切ですが、司法試験に合格するというのがロースクール生の共通の目的であることは疑いようのない事実であるところ、多くの先生が司法試験の過去問を研究された上で講義をしてくださり、司法試験受験生としては効率の良い勉強が日々できていると感じることができます。また、後述のとおり、学生同士で自主ゼミを組むことは極めて重要であると考えられるところ、学生だけで集まるのだと結論がまとまらないことがあったり、誤った理解をしてしまったりするリスクがありますが、先生にもご参加いただくように打診をすることで多くの先生が快くご対応くださり、より正確で実りの多い自主ゼミを行うことができました。
⑶②様々なバックグラウンドをお持ちの学生との交流があること
我々の学年は、ちょうどコロナ禍が猛威を振るっていたときに入学したこともあり、他の学年と比較すると交流が少なかったのですが、それでも、筑波LSは、20代から70代と幅広い年齢層の方とが上下関係なく、肩を並べて1つの目標を目指すことができる環境でした。これは他ではなかなか無い環境だと思います。また、学生は、私のようなサラリーマンもいれば、公務員、教員、医師、司法書士、税理士、会社経営者等様々なバックグラウンドをお持ちなので、自分にはない視点や発想を得ることもできます。
ここで、もしかすると、いろんな年齢やバックグラウンドの方がいるからといって司法試験合格に関連して、何か意味があるのかと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、私は極めて重要な意味があると言い切ることができます。というのも、司法試験の論文式試験では法的三段論法(規範、あてはめ、結論)をしっかりと守って論文を書くことが必要不可欠となりますが、その中で最も点数が振られることが多いとされている「あてはめ」は自分が今までの人生で得てきた経験則を用いることになります。そこで、いつも同年代で同じような価値観の人としか関わっていない人と、幅広い年齢やバックグラウンドの方と関わってきた人では、持っている視点や発想の幅も広さも格段に異なるといえ、筑波LSで様々な方と関わることは「あてはめ」の質を高める良い機会になると考えられるためです。
また、私は、筑波LSの1年生の夏頃から司法試験本番1ヶ月前くらいまで、気のあった(+大変優秀な)お二人と継続的にゼミを実施していました。それぞれの答案を共有しながら、自分に書けない端的かつ分かりやすい「規範」や「あてはめ」の書き方など多くを学ばせていただきました。1人で勉強をしているとモチベーションが上がらない日もありますし、自分が成長しているのか見えない時期もありしんどくなってくるため、自主ゼミを週1回以上で実施して、勉強はもちろんのこと雑談、情報交換ができたことは心の支えとなっていました。
皆さまにおかれても、筑波LSに入学された際には、積極的に同学年の方に声をかけて自主ゼミをなされることを強くオススメいたします。なお、受験は孤独との戦いであるとか、司法試験受験生である以上同級生は皆ライバルといったお考えの方もいらっしゃるかもしれません。ただ、令和5年に筑波LSで司法試験に合格したメンバーの多くは、それぞれ気の合う方と自主ゼミを行っており、自主ゼミに参加していた人の多くが合格されたという実績もあるので、司法試験は、仲間と共に合格を勝ち取りにいくチーム戦と考えた方が実態に近いと思います(私が所属していた3人の自主ゼミでも今年全員合格しました)。
⑷③施設が必要十分備わっており、自習やゼミを快適に行えること
自主ゼミは、オンラインで行うことが多かったですが、自主ゼミをするための教室や、24時間勉強ができる自習室、司法試験合格に役立つ書籍等が筑波LSにはあります。個人的には、長時間同じ場所で勉強し続けると集中力が落ちてくる傾向にあったので、一日中勉強ができる日には、朝は自宅、昼は筑波LSの自習室、夕方は筑波LSの教室、夜は自宅といった具合で数時間毎に場所を変えて勉強するようにしていました。また、図書館も自習室の隣にあり、かなり重宝しました。
また、ハード面以外にも、例えばチューターゼミという司法試験合格者が論文の書き方や司法試験の対策方法を共有してくださるゼミが行われたり、エクステンションプログラムという司法試験の数ヶ月前に論文のチェックや重要論点の解説をしてくださるイベントがあったりとソフト面でも相当充実しているように感じました。
4.最後に
以上つらつらと記載したように、筑波LSは、働きながら司法試験合格を目指す方にとって、間違いなく良い環境を提供してくれる場所だと思います。ただ、あくまで司法試験合格という目標を達成するための1つのツールであって、筑波LSに入ったからといって当然に司法試験に合格できるわけではありません。仕事をしながら朝、夜に勉強することは相当の覚悟を要しますし、筑波LSの授業内容を自分の血肉とすることは前提として、司法試験本番で自分の理解、考えを正確かつスピーディーに表現できるようにするための研鑽を数年間継続しなければなりません。また、司法試験を目指す数年間は、一定程度プライベートは犠牲にせざるを得ず、周りの方のご理解も必要になるでしょう。そのため、何となく弁護士になりたいという漠とした考えで、筑波LSに入学されることは後悔することになりかねません。ただ、逆に強い想いをもって、勉強に積極的に取り組まれる方には筑波LSを強くオススメいたします。少しでも多くの方が筑波LSにご興味をもってくださって、入学いただき、司法試験に合格されることを心から祈念しております。