本専攻修了者による令和4年度司法試験合格者座談会

出席者
 Y.O.  さん:未修コース2018 年⼊学2022 年修了(長期履修)
 K.O.  さん:既修コース2020 年⼊学2022 年修了
 H.M.  さん:既修コース2019 年⼊学2021 年修了
 K.N.  さん:既修コース2019 年⼊学2021 年修了
司会:萬澤 陽⼦准教授

◆まずは、皆さんのプロフィールを簡単にご紹介ください。
Y.O. 私が⾼校卒業後に⾏った⼤学は法学部がない⼤学でした。そして、⼤学卒業後に海外の⼤学院に留学したのですが、こちらも法学が専⾨ではありませんでした。2018年4⽉に筑波法科⼤学院に⼊学したのですが、その直前の3⽉までの3年半、ある⼤学の通信課程の法学部の3年次に編⼊して法学を勉強しました。2018年4⽉の⼊学時から⻑期履修を選択し、4年後の2022年3⽉に修了して、1回⽬の受験で合格することができました。
K.O. 私は法学部出⾝です。旧司法試験の受験歴があり、⺠間企業で働きながら予備試験を受験していました。筑波⼤学ロースクールには、2020年4⽉既修コースに⼊学し、2022年3⽉に修了しました。私も修了した2022年の司法試験に合格しました。
H.M. 私も法学部出⾝です。学部4年次に旧司の短答試験を受験したことがありますが、そのときはおとなしく4年で卒業し、いったん⺠間企業に就職しました。その後、思うところがあって地元⾃治体に転職し、現在に⾄っています。筑波⼤学ロースクールには2019年4⽉に既修コースで⼊学し、2021年3⽉に修了しました。司法試験は2回⽬の受験で合格できました。
K.N. 私も法学部出⾝で、また、かなり昔の話ですが旧司法試験の受験歴があり、そのときは論⽂試験を突破することができませんでした。仕事はずっと企業の法務(+コンプライアンス)部⾨で働いています。いくつかの業種を経験しましたが、現在は外資系保険会社の法務・コンプライアンス部⾨におります。筑波⼤学ロースクールには2019年に既修コースに⼊学し、2021年に修了しました。私も、2回⽬の受験で合格しました。
◆次に、入学した経緯などお聞かせください。
Y.O. 私は、数年前の時点のことですが、それまで10年ぐらい外資系の会社の法務・契約関係の部⾨で働いたところ、その会社の本社や他の国の関係会社で私と同じ業務をしている同僚の多くが弁護⼠資格を持っていて、インハウスとして働いていました。また、⽇本企業でも、インハウスの弁護⼠として企業の法務部等で働く⼈が増えていると感じていたこともあり、将来的なキャリアにおいて弁護⼠資格を持っておく⽅が良いかと思ったことがきっかけです。そこで、社会⼈でも通える法科⼤学院を探して、筑波に⼊学しました。
K.O. 私は、働きながら予備試験を受験し、合格したタイミングで弁護⼠にキャリアチェンジする予定でしたが、何度受験しても論⽂試験の成績がCやD⽌まりで⼀向に上がらず、基本的な法的知識をしっかり⾝につける必要性を感じてロースクールへの⼊学を決意しました。経済的な事情から受験のために仕事を辞める予定はなかったため、働きながら通える社会⼈向けロースクールとして定評のある筑波を選び、結果として修習に⾏くまで仕事を辞めずに済みました。
H.M. 年齢を重ねてきて職業⽣活では先が⾒えてきました。このまままではいけない、定年のない仕事に就きたいと思って、昔⼀度だけ受験したことのある旧司法試験を思い起こし、やり残したことがあったと年甲斐もなく新司法試験を⽬指すようになりました。私も予備試験を受け続けていたのですが、論⽂試験の壁は⾼く、このままではいつまで経っても司法試験にたどり着けないと思い、仕事も続けられる夜間ロースクールの筑波を受験し、合格することができました。
K.N. 私も、昔受験していた旧司法試験で論⽂試験を突破できず、あきらめたつもりでしたが、⼼の底ではまだ法曹になりたいという気持ちが残っていたのかもしれません。ずっと会社で勤務しておりましたが、50代半ばを迎え、第⼆の⼈⽣について考える時期が来たように感じました。私も、⽣涯続けられる仕事を⾒つけたいと思っていたところ、法科⼤学院の⼊試から苦⼿な適性試験がなくなったと聞き、仕事しながらでも通える筑波の⼊試を受けました。このときは、また学校で法律を勉強できたら楽しいだろうなという軽い気持ちで受験しました。昔使っていた旧司法試験の教材はほぼ捨てていたのですが、ごく⼀部残っていた⺠訴法のテキストなどを物置から引っ張り出し、懐かしいなあと思いながら、少し勉強して⼊試に臨みました。本当に久しぶりに⼤学の校舎という場所で法律の論⽂試験や⼝述試験を受けたのはとても楽しい経験で、結果も運良く合格をいただくことができました。その後すぐに転職をしたため、⼊学を1年遅らせようかとも考えましたが、学校にご相談し⾯談していただいたところ、先⽣から、⾛りながら考えましょうと背中を押され、思い切って2019年4⽉に⼊学しました。
◆在学中、どのように勉強したか、どのように仕事と学業を両⽴させたかについてお聞かせください。
Y.O. 私は⼊学したとき、⼩さな⼦供が2⼈いて、配偶者も働いていたこともあり、⼦育てや家事は分担しなければならないし、会社での仕事もこなさなければならないという状況でした。ですので、授業の予習・復習、テストの準備等に使える時間はかなり限られており、時間のやりくりに苦労しました。授業中に、疲れてうとうとすることも複数回あったと思います。
そんな状況だったので、各科⽬について、教材や勉強⽅法等は、⼿を広げようとしないで、各科⽬の全体像をざっくりと理解して、その中で重要だと思われることに集中して勉強しました。⾃主ゼミや他の形態のゼミへの参加、先⽣のところに質問に⾏くなどは、時間の制約があったことから、他の学⽣の⽅と⽐べたらかなり少なかったと思います。あせりや不安もありましたが、できることに集中して、範囲や⽅法を絞って短時間勉強することに気持ちを切り替えるようにしました。そのような時間のない私にとって有⽤だったのは、ある予備校の講師の講座でした。これが⾃分に合っていて理解しやすかったので、筑波で履修する科⽬と同じタイミングで、同じ科⽬をその予備校の講座で勉強しました。
筑波での講義や演習と予備校の教材・講義が相互に補完する形で理解や記憶の助けになり、効率的に勉強できたと思います。勉強の教材は基本書、演習書、予備校テキスト等さまざまあり、また勉強⽅法も授業を中⼼にする、予備校を主にする、独学する、ゼミや勉強会等で他の学⽣と⼀緒に勉強する等、さまざまあると思いますが、全ての⼈に共通するベストな教材や⽅法はないかと思うので、⾃分には何が合っているのかを試⾏錯誤しながら⾒つけていく必要があるかと思います。
K.O. 私は、ロースクールへの⼊学が決まった直後に会社と交渉し、経理部⾨だったため⽉初の決算締⽇を除いて定時退社を認めてもらい、授業や期末試験を⽋席することはせずに済みました。ただ、振り返れば、細切れの時間しか確保できず、授業の準備や期末試験対策に終始していたように思います。落ち着いて理解を深めるためには、まとまった時間を確保するために何らかの⼯夫をすべきだったと反省しています。
勉強⽅法については、私は旧司法試験や予備試験を受験していたので、各科⽬の全体像はある程度把握していました。ですので、授業の進⾏に沿って先⽣⽅の指定する図書やオリジナルレジュメを読み込み、授業に備えました。
勉強⽅法に関連して、既修コースで⼊学し、特に受験歴の⻑い場合は、過去に⾝につけた知識が陳腐化している可能性があるので気をつけなければならないと感じたことがあります。具体的に私は、刑法で、正当防衛の急迫性に関する最新判例を押さえないまま受験に臨み、かなり危ない⽬に遭いました。このような場合は、未修コースの1年⽬で履修する科⽬の知識を何らかの⽅法でキャッチアップした⽅が良いと思います。
また、司法試験の受験対策について、独⾃に対策する必要がどの程度あるのか分からず不安でしたが、チューターゼミの活⽤と期末試験対策で乗り切りました。チューターゼミでは司法試験の過去問を題材にすることが多く、⼤半の科⽬について、平成25年以降の司法試験過去問の答案を作成しストックすることができました。予備校の答練については利⽤しませんでしたが、⼿書きの答案作成の練習や、論点の網羅性チェックのために、時間があれば受講したかったところです(TKCの直前模試は本番の予⾏練習を兼ねて利⽤しました)。
答案の書き⽅については、チューターゼミで過去問の答案作成を重ねることで、随時⾒直しをかけていきました。答案の書き⽅がよく分からないという⽅は、チューターゼミを有効に活⽤することで、他の参加者の答案スタイルを学んだり、⾃分の作成した答案への効果的な指導を受けることが可能と思います。
H.M. 私は、18時20分に始まる授業に間に合うようにするため、勤務は通常より30分早い時差出勤としました。2年⽬はコロナで授業の多くがオンラインになりましたが、⽣活のリズムを崩さぬよう、ロースクール修了まで時差出勤を続けました。平⽇は授業に出るのに精⼀杯で、仕事が休みの⼟曜⽇にも授業はありますので、勉強でまとまった時間が取れるのは基本的に⼟曜⽇の夜と⽇曜⽇になります。もっともチューターゼミの予習と復習、総合演習・期末試験の勉強は期限がありますので平⽇の夜でも帰宅後にやりました。総合演習のGPA は本試験の合否との相関関係が⾼いと⾔われていますが、相関関係にあらがって合格する⼈は私も含めてそれなりにいますので、⾏為規範としては総合演習のGPAを少しでも上げる努⼒をする、評価規範としてはGPA が⽬標に届かなくてもあきらめずに地道にコツコツやる、ということだと思います。
勉強⽅法ですが、本学⼊学後ほどなく同期の仲間に誘われて各科⽬のチューターゼミに参加しました。仲間に誘われてチューターゼミに参加していなければ、そして何より筑波で勉強仲間と出会うことがなければ、本試験の合格はあり得ませんでした。他⽅、予備校は、無料のオンライン公開講座を除き、利⽤しませんでした。
K.N. 私も、⼊学して1年⽬はコロナ禍の前ですので、すべて通学授業で、当時転職ばかりの会社の上司と同じ部署のメンバーに打ち明けたうえで通学がスタートしました。異業種への転職で、法務・コンプライアンス部⾨の部⾨⻑という⽴場でもあり、しっかり仕事をして新しい職場で認められなければならないという強いプレッシャーがありました。朝早く出社して仕事をこなし、17時半くらいに会社を出て学校に急ぐという⽣活はハードなものでした。しかし、既修コースの同級⽣は、リーダーシップをとってくださる⽅や、惜しみなく他⼈をサポートするといった素晴らしい⽅ばかりで結束しており、みんなで頑張ろうという雰囲気がありました。
また、既修コース・未修コース・⼊学年度を問わず、多くの⽅々と仲良くなりました。具体的な事例をベースに法的な解決策を考える、先⽣や仲間と議論するという法科⼤学院の授業は知的好奇⼼を刺激するものであり、ハードなスケジュールの中でも学校に⾏くのはとても楽しかったです。学期末試験の前はつらかったですが、熱⼼な先⽣⽅の指導をいただき、仲間と⼀緒に頑張り、何とか単位を取っていきました。筑波は⼤⼈の学校であり、仕事、家庭などで様々な困難を抱えながら勉強と両⽴させようと頑張っている⼈たちの集まりです。ですので、「⼤変なのは⾃分だけじゃない」と思え、⾃然に仲間との連帯感が⽣まれますし、先⽣⽅もそのような学⽣の状況を踏まえて熱⼼に指導してくださいます。
2年⽬になると、コロナ禍が始まり、オンライン主体の授業になりました。オンラインの場合、先⽣への質問やクラスメイトとの話がしにくくなる等のコミュニケーション上の問題が考えられますが、1年⽬で先⽣やクラスメイトとの⼈間関係が構築されていましたので、問題なかったと思います。
学校の勉強⽅法については、先⽣が出される事前課題以外、予習はできませんでした。授業中は疲れていてもできる限り先⽣の話をよく聞き、授業に集中するようにしました。テキストやレジュメにできるだけメモをとっておき、期末試験の3週間くらい前から、それまでに授業でやった資料を整理し、直前に⾒直せるように整えていきました。社会⼈にとっては、とにかく勉強時間は限られますので、司法試験のために⼿を広げる余裕はないと思いますし、その必要もないと思います。筑波の授業、演習、期末試験で取り上げられる内容で、司法試験に合格できる基礎知識をカバーしていると思いますので、それらの資料を司法試験の前に短時間で⾒直せるように整理しておくことはとても⼤事だと思います。
また、2年⽬は授業が空いた⽇に積極的にチューターゼミや⾃主ゼミを⼊れて答案の書き⽅の練習をする等、先⽣と仲間と⼀緒に勉強しました。ある先⽣から、良い答案を書けるようになるには、基礎知識の存在を前提として、①良い答案を読むこと、②実際に書くこと、③講評を受けること、が重要であり、かつそれに尽きると教わりました。これをチューターゼミや⾃主ゼミに参加することで実践していきました。いつも熱⼼に指導いただいた先⽣⽅には本当に感謝してもしきれません。
◆ロースクールの提供するものでよかったもの、⾜りなかったもの等について、もしあれば、お聞かせください。
Y.O. ロースクールの科⽬の中では、特に演習の科⽬は試験の準備に役⽴ちました。先⽣が事例に関して、学⽣に質問をしながら話を進めて、最終的に事例に対する⼀定の回答や⽅向性を⽰すことで、事例問題を解く思考過程を垣間⾒ることができました。また、演習の科⽬によってですが、事例問題について⾃分で起案して、それについて先⽣がコメントを返してくださるものがあり、講義でのやり取りに加えて、⾃分で解答を組み⽴てるという訓練になったと思います。
K.O. 筑波の先⽣⽅が作成するレジュメは⾮常によくまとまっており、レジュメを読んで理解に不安がある部分を基本書に戻って確認するという⽅法で、メリハリのついた予習・復習ができました。分かっていたつもりの論点でも、⽤語の使い⽅や説明の仕⽅が誤っていると先⽣⽅の反応から明らかに分かりますので、理解の不⼗分な点を対話を通じて直に体感することができました。これら対話形式によって得られる感覚は、独学や予備校の授業にはなかったものですので、ロースクールに⼊学して本当に良かったと感じました。
H.M. ロースクールの提供するものでよかったものは、授業レジュメ、総合演習と期末試験の問題・解説・講評・返却答案です。授業レジュメは知識を整理して定着させる上で⼤変有⽤です。総合演習と期末試験の問題はどれも⾃分が⼀⽣懸命取り組んだ教材なので、しっかり復習すれば本番でも功を奏し、合格につながります。振り返ってみれば合格に必要な知識はロースクールの授業で⼗分だと感じています。
ロースクールで⾜りなかったものは思い当たりませんが、私は授業で指定された基本書は通読まではできず、重要と思われる箇所を重点的に拾い読みしていました。夜間ロースクール⽣は分厚い基本書を通読する時間がなかなか取れないので、基本書は指定ではなく推薦にとどめていただくとありがたいですし、⼀⽅で試験対策に有⽤な演習書の推薦も併せてお願いしたいです。
K.N. 繰り返しになりますが、筑波の授業、演習、期末試験で取り上げられる内容で、司法試験に合格できる基礎知識をカバーしていると思います。先⽣⽅は、学⽣が仕事や家庭等との両⽴で時間がないことを踏まえて、真に重要な内容を、どのようにわかりやすく教えるかという点について常に配慮されていると思いますし、それがレジュメや授業の進め⽅等に表れていると思います。ですので、授業等を何度も復習して基礎知識を定着させ、チューターゼミや⾃主ゼミに参加して答案の書き⽅を⾝に付けるという⽅法は、⾮常に合理的で、とても良かったと思います。また、筑波の先⽣はいつも本当に熱⼼に教えてくださり、質問にも丁寧に答えていただく等、⾮常にありがたかったです。
◆ロースクール修了後から本試験まで、どのように過ごされたかお話いただけますか。
Y.O. 最終年度の4年⽬の12 ⽉で全ての単位を取り終わってから、試験まで約5か⽉弱の期間がありました。その間、私は、公法2科⽬、⺠事系3科⽬は個別チューターゼミで過去問を起案して、事例問題の答え⽅、書き⽅等をチューターの先⽣にご指導いただきました。またチューターの先⽣のアドバイスに従って、勉強時間の3分の1程度を短答対策に費やしました。チューターゼミと短答対策の勉強以外では、⼿元の予備校の教材の中でも短い時間で復習できるものに絞って、何度か読み返しました。複数の教材を⼀回⾒直すのではなく、教材を絞って同じものを繰り返したのが良かったのだと思います。
また、試験当⽇に対応するための準備として、予備校の答練を1⽉から3⽉に受講しました。各科⽬2度ずつ、教室で時間内に初⾒の問題を、試験⽤六法を使って答える練習をしました。また3⽉には予備校の模試を、本番の会場と同じ場所と同じスケジュールで受験して、本番に備えました。
振り返っての結果論にはなりますが、インプットやゼミ等のアウトプットはもちろん重要とは思いますが、答練や模試等で教室や試験会場で初⾒の問題を焦りながら解く、記憶があいまいな分野の問題をなんとか答えるという練習をしたのが本番に役⽴ったと思います。
K.O. 私は、チューターゼミを通じてストックした司法試験過去問の答案を何度も⾒直していました。また、授業で配布されたレジュメを⾒直しながら、本番直前の1週間で⾒直したいレジュメを絞り込んでいきました。この作業を繰り返す過程で、知識の再確認を進めていきました。答案を⼿書きする訓練も⾏いたかったのですが、時間が取れないのを⾔い訳に⼗分に実施できないまま本番を迎えました。仲間を募って取り組むなど、強制の仕組みを作れると良かったと思います。また、予備試験の過去問で出題された論点や問題意識もチェックしておきたかったのですが、後回しにしたまま本番を迎えてしまいました。会社には事前に交渉し、年度決算の作業が⽚付いた4 ⽉20 ⽇頃から⻑期休暇を取得して、頭を完全に試験モードに切り替えて5 ⽉11 ⽇からの本番に臨むことができました。
H.M. 私は合格するまでに本試験を2回受けたので、1回⽬と2回⽬を総合して申し上げますと、過去問の答案構成をして出題趣旨/採点実感と照合したり、合格者答案を写経(書き写し)したり、各科⽬1冊ずつ演習書を選んで基本書代わりに通読したり、各科⽬の重要な定義や規範を暗記カードに書いて記憶したり、判例百選に載っているような重要判例の拾い読みをしたりしていました。短答対策は直前期に数年分を1回ずつ解いただけでした。
勉強の素材として過去問は超重要と思います。答案の書き⽅は合格者答案から学ぶことができます。暗記カードは100 円ショップで調達しましたが、暗記カードに書いた各科⽬の重要な定義や規範は直前期に声に出して読みながら短期記憶に努めました。また科⽬の特性にもよりますが、本試験では判例の射程が問われることがあり、これに備えるため、重要判例は判旨だけでなく事案の概要や解説も読むように努めました。
私の場合、短答の勉強のウエイトが低いですが、短答は予備試験で何度も経験していたので、論⽂の⽅に多くの時間を充てたいと思ったためです。実際には本試験の短答は最終⽇に実施され、失敗すれば論⽂を採点してもらえない本当にこわい試験ですので、もっとしっかり対策しておくべきでした。特に、多くの受験⽣が正解する問題についてはできるまで繰り返して解いておいた⽅がよかったと思いました。
また、私の場合、模擬試験は受けなかったので、1回⽬の本試験が1年後の2回⽬の本試験の模試になってしまいました。やはり、どこかの模試を受けてから本番に臨んだ⽅が確実と思います。
あと、⼒をつけようと思うと、ついつい、いろいろな教材に⽬移りして⼿を広げたくなるのが⼈情です。しかし、Y.O.さんもおっしゃるように、⾃分が選んだ⼀つの教材を繰り返しやった⽅が理解を深め、知識を定着させる上で有利で合格への近道だと思います。
K.N. 私も、予備校は利⽤せず、筑波の授業、チューターゼミ、⾃主ゼミ、エクステンション講座等を活⽤して試験勉強を⾏いましたので、ロースクール修了後は、筑波の授業のレジュメ、期末試験の答案、ゼミの答案、エクステンション講座の答案等を復習しました。
また、論点については、授業のレジュメや予備校の論点集等に授業で習ったことを⼿書きで加筆して、暗記しました。暗記は苦痛ではありますが、本試験場で少しでも多く事案の当てはめ等に時間を使えるよう、定義や論点は暗記してすぐにアウトプットできるようにしておく必要があります。短答については、論⽂1科⽬分に相当する重みがありますので、できればここで点を稼いで論⽂を少しでも楽にしたいところです。具体的には、直近10 年分くらいの過去問で全体正答率60%以上の問題のみを解き、都度条⽂を確認していきました。
また、肢が⼆つに絞られて最後に「どちらが正解か(より確からしいか)」を判断する際の感覚を研ぎ澄まして決断することを意識して訓練するようにしました。1回⽬の受験では論⽂の刑事系ですごく悪い点を取ってしまい不合格となってしまいましたので、2回⽬の受験ではすごく悪い点(D 評価以下)を取らないことを⽬標とし、条⽂の指摘、問題⽂を使ったあてはめ、誰もが書くであろう基本的な論点を落とさないことを強く意識して勉強しました。
私は筑波の⼊学前に転職をしたと申し上げましたが、司法試験の2 回⽬の受験の半年ほど前にさらに転職をして、仕事がさらに忙しくなりましたので、2 回⽬の受験の前は本当に勉強時間がとれなくなりました。⼿持ちの教材の復習を中⼼とする勉強しかできませんでしたが、むやみに⼿を広げなかったという意味で結果的には良かったのかもしれません。司法試験では、良い点を取ろうとするより、すごく悪い点を取らないようにする意識が重要と思います。特に、司法試験では考えたこともない問題が必ず1、2問は出題されると思いますので、そのときに、基本的なことだけ書いてくればよいのだと思って落ち着いて対処し、⼤崩れしないように(すごく悪い点を取らないように)対応することも⼤事だと思います。
◆これからのご⾃⾝のビジョンと、後輩へのメッセージをお願いします。
Y.O. 今年合格した⼈の多くは11 ⽉から始まった司法修習に参加したようですが、私は1年修習を⾒送って、次回(2024年3⽉頃開始のようです)に参加する予定です。⾃分のキャリアの希望として、弁護⼠事務所で働くということは考えておらず、今まで通り企業の法務部でインハウスとして働くことを計画しており、修習後は現職に復帰したいと思っています。
これから試験の勉強をされる皆さんは、勉強も⼤変だと思いますし、精神的にも⾟くなることがあるかと思います。仕事をしながら、また家庭や家族、その他個⼈的な事情で思ったように時間が確保できなくてイライラしたり、周りと⽐べて焦ったりすることもあるかと思います。
ただ、勉強の仕⽅、個⼈個⼈の強みや弱みは異なるので、同じ⽅法、同じ教材、同じ勉強時間で準備すればよいということはないと思います。⾃分に合った⽅法で、⻑所・得意なところを伸ばすのか、或いは弱点を補強するのか等、戦略的に試験の準備に取り組むのが良いかと思います。
⾃分の場合ですが、暗記が極端に苦⼿で、また試験の準備・勉強にかける時間が制限されるという不得意な点、不利な点がありました。
その⼀⽅で、各科⽬の重要項⽬の概要や⼤枠を理解すること、また事例のポイントを理解すること、⽂章を書くことは⽐較的得意だったと思います。そのため、思い切って過去問を起案することは最⼩限にして、その分節約した間を短答対策や各科⽬の理解のため教材の復習に当てました。試験に合格するという⽬標は共通ですが、上位で合格したいのか、ギリギリでも合格さえすればいいのか、また必ず1度で合格することを⽬指して勉強するのか、2度ぐらい受験してどちらかギリギリで合格することを⽬指して勉強するのか、対策や準備は各個⼈でバラバラだと思います。⾃分に合った⽅法等を⾒つけて、ぜひ頑張ってください。
K.O. 私は年齢的なこともあり、司法試験に合格してすぐに司法修習に⾏きます。経験年数がものをいう弁護⼠の世界で、⺠間企業での経験がどの程度活かせるのか未知数ではありますが、⾃分に合った法律事務所を探してみるつもりです。ある程度⾼めの年齢層の⽅においては、紹介してもらえそうな転職先を確保しておいたり現職への復帰の交渉をしておくなど、合格後のキャリアプランを固めておくことをお勧めします。もちろん、合格後も修習へ⾏かず、現職でキャリアアップされる⽅もいらっしゃいます。そのようなバリエーションに富んだバックグラウンドをお持ちの⽅々とコネクションを作れるという点は、筑波ロースクールに⼊学することで得られる⼤きな財産です。
また、司法試験の合格だけが⽬標ではないと思います。法的なものの⾒⽅や考え⽅を学ぶことで、困難な課題にぶつかった時でも落ちついて対処できたり、周りから頼りにされたりすることもあると思います。筑波ロースクールには、それだけの価値のある知⾒を提供してくれる先⽣⽅と、素晴らしい仲間が待っているはずです。ぜひ新たな⼀歩を踏み出してください。
H.M. 私も年齢が年齢ですが(笑)、仕事の関係から修習は1年⾒送り、次回77 期を⽬指します。就活については修習中にご縁のあった先⽣⽅や先輩⽅とのつながりを⼤事にして乗り切りたいと思います。健康の許す限り、何らかの社会貢献を続けていけたらと願っています。
後輩の皆さんへのメッセージですが、まずは本学に⼊学してみてください、ロースクールでは多くの素晴らしい出会いと知的交流が皆さんを待っています。司法試験は皆さんの夢や⽬標を実現する上で通過点の⼀つに過ぎません。しかし、だからこそ、皆さんにはぜひ、⾃分に合った勉強法で努⼒を重ねていただき、1年でも早く合格を⼿にしていただきたいと思います。筑波ロースクールの⼊試が第⼀関⾨です。皆さんのご健闘を⼼よりお祈りしています。
K.N. 私も、現在の会社業務との関係ですぐには司法修習に⾏けないのですが、今後修習を修了した後は、弁護⼠として、少しでも社会の役に⽴てるような活動をしていきたいです。これまでは企業の法務・コンプライアンスの世界で⽣きてきましたので、これまでの経験を⽣かしつつ、個⼈の事件等もやっていければと思います。
在学中あるいは将来⼊学される皆様には、仕事に⼀⽣懸命取り組んだうえで(これによって職場の理解・応援が得られやすくなると思います。)、勉強については、あまり⼿を広げず、筑波での学習に集中する⽅が、司法試験という意味でも結局は近道である気がします。また、⻑丁場ですので、メンタルも含めて体調管理が最重要です。私も筑波での2年間と司試験2回の受験を通して、体調⾯で⼤変なときもありましたが、そのようなときこそ、無理をせず、⼀⼈で悩みを抱え込まず、迷わず休息をとる、先⽣・学校の仲間・友達等と話をするといったことで、バランスをとって、休みながらでもよいですから、少しずつ前へ進んでいっていただけばと思います。⾃分の思うようにいかないのが⼈⽣ですので、そのようなものだと楽に考えることも⼤事です。これから筑波に⼊学、卒業されるみなさんと、いつか弁護⼠の仕事等でお⽬にかかれたり、さらには⼀緒に仕事できるような機会が来たら、とても幸せですね。そのようなときが来ることをとても楽しみにしています。