2001年3⽉ 早稲⽥⼤学法学部卒業
2017年4⽉ 筑波⼤学法科⼤学院未修コース⼊学(⻑期履修)
2021年3⽉ 筑波⼤学法科⼤学院未修コース修了
2022年9⽉ 司法試験合格
1. 法科⼤学院⼊学の経緯
⼤学卒業後、特別⽀援学校で教員助⼿をしながら通信教育で⼩学校教諭免許状を取得、正規の教員となり、いくつかの公⽴⼩学校で学級担任として勤務していました。⽣き⽣きとした⼦供に囲まれて過ごす毎⽇は楽しく、⼩さな⼯夫で⼦供たちが変わっていく姿を⽬の前で⾒られるこの仕事が好きで、苦労は多いものの、充実していました。
3⼈⽬の⼦供の産休・育休から職場復帰した年、習い事でも始めようかと調べた際に、社会⼈のための夜間法科⼤学院があることを知り、これなら働きながら勉強できるし、⾃分にとって司法試験を受けるラストチャンスかも、と思いつき、とりあえず⼊試を受けることにしました。
教員の質的・量的業務過多が社会的に注⽬され、「スクールロイヤー」という⾔葉が聞かれるようになっていた頃でもありました。それまでの教員経験を活かした形で、⼩さなころから夢⾒ていた法律の仕事ができるかもしれない、法律の専⾨的知識を得て、苦しんでいる教育現場の⼀助となりたい、と思ったことも動機の⼀つでした。
2. 学⽣⽣活
働きながらロースクールに通うこと、それはまさに「いばらの道」です。仕事を終わらせ、授業スタートに間に合うよう茗荷⾕に駆けつけるだけでも、相当な努⼒と⼯夫を要します。
職場の理解や家族の協⼒を得るための調整も必要です。しかもそれを週に何回も、3〜4年に渡って続けなければなりません。
さらに、授業で課される予習やレポート、判例報告、ゼミ参加、3か⽉ごとに訪れる期末試験、GPAや単位数での進級要件・・・次々とハードルが現れます。
そんな時に助けてくれるのが、志を同じくする友⼈です。課題の提出⽇、試験の範囲や出題⽅法の確認、過去問対策やゼミの運営、飲み会の企画にいたるまで、私の学年にも中⼼となって皆をまとめてくれる⼼強い⽅々がいらっしゃいました。筑波ローの学⽣は、優秀かつストイック、コミュニケーション能⼒も⾼い⽅ばかりで、メンタルに余裕があるためか、予習成果や参考となる⽂献・資料、よい評価を得られた答案等を惜しみなく共有してくださることが多く、私の命綱となりました。また、それぞれの職場でエース級の活躍をされているのが⾔葉の端々から感じられ、そんな他業種の話を聞くのも学⽣⽣活の楽しみの⼀つでした。
私は保育園児を含む3⼈の⼦供を育てる⺟親だったため、授業のない⽇は家族と過ごす時間を優先し、⾃宅での勉強時間は本当に最低限しか取れませんでした。平均すると平⽇は1時間あるかないか、休⽇でも3時間ほどでしょうか。先⽣⽅から課された「宿題」をこなすだけで精⼀杯。それは、当時の⾃分が置かれた状況では仕⽅のないことで、変えられませんでした。その分、授業中は全集中で先⽣の話を聞き、期末試験前には得意の⼿書きでノートをまとめていきました。このノートは、信じられないことに(?)、司法試験本番直前の参照資料にもなりました。筑波ローの授業や期末試験は本試験にも⼗分対応できるレベルですし、やはり、⾃分の思考に沿った⾃作資料が⼀番です。時間のない社会⼈の皆様には、授業と期末試験対策を⼤切にされることを強くおすすめいたします。
3. 修了後、司法試験合格まで
仲間との思い出に彩られた学⽣⽣活とは対照的に、修了してからは、⾃分の「合格したい」という気持ちだけが頼りの、孤独な勉強⽣活が待っています。
特に1回⽬の司法試験に不合格だった後は、「今でも⼗分に教員として職責を果たし社会貢献し、収⼊も得ているのに、なぜ、こんな苦労をして勉強をしているのだろう」という、「それは、⾃分が決めて、やり始めたことだから」としか答えようのない問いに悩まされました。この2回⽬の司法試験を受けるまでの1年間に、先に合格して励まし続けてくれた同期の友⼈、共に合格を⽬指して声を掛け合った同期の友⼈、そして難関試験に挑戦する私の可能性を信じ、いつも前向きに応援してくれた夫と我が⼦たちの存在がなかったら、私は挫けていたと思います。仕事に家庭にと、相変わらず勉強時間は確保できない⽣活でしたが、精神的には司法試験に常に拘束されているような、本当に苦しい期間でした。
なお、筑波ローではGPA要件ぎりぎりセーフで修了した私が、時間のない中でどのように勉強したかについての具体的な対策は、「省エネ合格体験記 N」として学内掲⽰板に提供しておりますので、ここでは割愛いたします。
4. 法科⼤学院で学ぶ意義についての意⾒
法科⼤学院に⼊学したのは、司法試験の受験資格を得るためでした。しかし私は今では、たとえ司法試験に合格していなかったとしても、筑波ローで学んでよかったと思っています。それは、法学部を卒業しただけでは得られなかった、「法的思考」が⾝についているのが⾃分でも実感でき、職務に活かすことができると分かったから、です。
筑波ローに通うようになってから、職場で、「話すことに説得⼒がある」「問題を整理してくれたから解決できた」「⽂章が読みやすい」等々と評価されることが多くなりました。担任している⼦供たちからは、「怒るときに、納得させてくれるからいい」とも⾔われました。
これは、法律を学んだことにより法的な思考⽅法を⾝につけ、それを仕事でも応⽤できるようになったからだと思います。
また、1回⽬の司法試験に不合格となった後は、勉強したことを直接的に職務に活かしたいと考え、法務省主催の法教育の研修に参加し、義務教育段階での法教育の授業を⾃分でやろうと計画してもいました。(その後、司法試験に合格したため退職したので、実現の機会はまだ訪れていませんが・・・)
法律を学ぶことは、⾃分の知⾒を確かに広げ、思考⼒や表現⼒を何段階もレベルアップさせてくれます。これまでと同じ世界が、違って⾒え、物事へのアプローチが変化してきます。それを今後の⼈⽣にどう活かすかは、⾃分次第です。司法試験に合格し、法曹となることは、無限に広がる道の⼀つでしかない。このことは、ぜひ、⼼に留めておいてください。
5. 最後に
知⼒・体⼒・時の運に恵まれた、本当に⼀部の限られた者にだけ許される贅沢な挑戦、それが有職者の夜間ロースクール⽣活だと私は思います。⾃分がその挑戦者となれたことを、いつも誇らしく思っていました。
知的好奇⼼を満たす授業をご教授くださり、時に厳しく、時にあたたかく接してくださった先⽣⽅に、改めて感謝申し上げます。また、充実した学⽣⽣活を共に過ごし、修了後も様々なかたちでお付き合いいただいている友⼈の皆さんに、感謝申し上げます。
これから筑波ローを⽬指す皆様、在学⽣の皆様は、貴重な学⽣⽣活を存分に味わっていただきたいと思います。そして、修了⽣の皆様を含め、司法試験への挑戦が有意義なものとなるよう、法律を学んだことが今後の社会⼈⽣活において新しい扉となるよう、⼼より祈念しております。
健康第⼀で、⾃分らしさを⼤切に。