令和4年9⽉司法試験合格 H.O.さん

令和4年9⽉司法試験合格 H.O.さん
2017年4⽉ 筑波⼤学法科⼤学院既修コース⼊学
2019年3⽉ 筑波⼤学法科⼤学院既修コース修了
2022年9⽉ 司法試験合格

1.はじめに
 私は、50代後半に筑波大学法科大学院(以下「筑波ロー」)に入学し修了しました。その後の司法試験受験も順調とはいかず、4回目の挑戦でようやく合格することができました。

2.筑波ロー入学の経緯
 私は大学法学部を卒業後、民間企業に就職し現在に至ります。全国に転勤の可能性がありますが、必ずしも都内勤務になる可能性が高いわけではありません。
 大学卒業から社会人の途中までは、司法試験のことを特に考えたことはありませんでした。しかし、法律については、仕事の関係で、例えば労働法など単発的に勉強してみるとおもしろいし、難しい仕事に立ち向かう際の自信が全く異なります。このことに気付くと、法律を学んだ方が、精神的側面も含めて仕事にも相乗効果が得られ、幅広い人生にもつながると思われました。また、「第二の人生」という観点も、年齢を重ねるにつれて比重が増してきました。
 一方で、司法試験受験資格を得るには、基本的にロースクールを修了する必要がありますが、私には会社を退職する選択肢は考えられませんでした。このようななかで、2014年、東京に転勤になりました。筑波ローで学ぶ千載一遇のチャンスです。しかし、すぐに受験を決断できたわけではありません。仕事と両立できず途中で挫折するのではないかとの不安がよぎります。しかし、逡巡しているうちに東京から異動してしまうと悔いを残します。思い切って受験し、2017 年に入学しました。

3.筑波ローでの生活
 期待どおり、筑波ローには多様な背景をもった人たちが集い、よき指導者のもと、共通の目標に向かって切磋琢磨していました。これは一人で勉強していたのでは得られない体験です。
 確かに、仕事と勉強の両立は容易ではありません。しかし、そういう状況下だからこそ生まれる工夫もあります。効率化も考えますし、両者間の気持ちの切り替えが、双方にメリハリを生みます。学んだことが仕事に役立つこともありました。この相乗効果のお蔭で、在籍の2年間、通学が苦になるということはありませんでした。
 ただ、活発に行われていたチューターゼミには、ほとんど参加できないまま終わってしまいました。この点は反省点として次項で述べます。それでも、先生方のポイントを押さえたご指導や同級生の仲間との交流によって、一人で勉強していたのでは決して得られないものを得ることができたと思います。

4.反省点から
 通常ならここで自分のとったお勧めの勉強法をご紹介するところですが、反省点を述べることによりご参考にしていただければと思います。
 まず1点目は、「一人でやる勉強」の限界です。筑波ローには素晴らしい先生方と優秀で意欲溢れる仲間がおられるのですから、その環境を最大限に活用するべきです。自宅が遠地という理由でチューターゼミにほとんど参加せずに終わってしまいましたが、何としてもトライするべきでした。「一人でやる勉強」だけでは「本を読む」受身の勉強になりがちなうえに、自分の答案の欠点を修正することも難しく、伸び悩んでしまうと思われます。
 2点目は、完全主義を捨て、自分の身の丈にあった答案を目指すことです。よく8ページびっしり記載した模範答案がありますが、人には書ける文章の量に差がありますし、分量は少なくともシンプルでわかりやすい文章を書く人もいます。自分の特徴をとらえて、現実にどのようなスタイルで2時間の試験に臨むのか、早く確立しないと、いつまでたっても不安定な起案から脱却できません。
 3点目に、試験直前期にまとまった時間を確保しにくい社会人が留意するべき点として、8科目の実力を試験当日に均等にピークにもっていくための工夫ということがあります。日常の勉強科目ローテーションの工夫に加えて、情報の選別と一元化を図り、直前期に広範囲を効率的にレビューできるようにしておく必要があります。私の場合、書き込みや切り貼りで教材を却って分かりにくくしてしまい、自分で自分の作ったものが使えないという事態に陥ってしまった苦い経験があります。
 そして、最後に4点目ですが、当然のことながら本試験では「決してあきらめない」ことです。論文だけで8 科目もありますから、主観としての出来不出来が生じますが、これは全く当てになりません。動揺することなく最後まで全力を尽くし、「絶対に自分から勝手に白旗をあげないタフさ」が必要です。結局、司法試験はこの「タフさ」の勝負ではないかという気さえしてまいります。

5.最後に
 筑波ローの先生方、一緒に机を並べてくださった同級生の皆さん、苦労をかけた家族に心より感謝いたしますとともに、これから筑波ローの門を叩かれる皆さんのご健闘を祈念申し上げます。