令和3年9月司法試験合格 T.O.さん

2017年4月 筑波大学法科大学院未修コース入学
2020年3月 筑波大学法科大学院修了
2021年9月 司法試験合格

1.経歴
職歴:4回の転職を経て外資IT法務部勤務(2015年入社・司法修習のため2021年10月末退社)
学歴:私大文系非法学部卒、海外大学院修士課程修了(英語圏・非法学分野専攻)、私大法科大学院修了(未修)、2017年4月筑波大学法科大学院入学(未修)・2020年3月修了
受験歴:2008年短答不合格、2009年論文不合格、2010年論文不合格、2021年9月最終合格

2.入学までの経緯
上記経歴の通り、私は、過去に別の法科大学院を修了したものの司法試験合格に至らず、この挫折した経験に悔いを残していたため、チャンスが巡ってくればリベンジしてみたいと考えていました。司法試験から撤退後、再度企業に就職し、直近はIT企業の法務部に勤務していましたが、やはり無資格であることに限界を感じるようにもなったため、弁護士資格を取得し、仕事の幅を広げキャリア・アップを図りたいと考えるようになりました。そこで、再度司法試験合格を目指すことにしましたが、私にとって筑波大学法科大学院は通学の利便性が良かったことから勤務先や家族の理解を得ることができ、2017年3月に入学するに至りました。

3.在学中の過ごし方
(1)私は学修経験者ではありましたが、司法試験から撤退して7年程ブランクがあったことから大方の知識が抜け落ちてしまい、未修コースにしか合格できませんでした。そこで、在学中は本学の授業の予復習、定期試験の勉強に全精力を傾け、ゼロベースで全てをやり直し法的思考力や知識を再構築することにしました。本学には熱心な先生方が多く、学生たちに何とかして力をつけさせようと日々熱意溢れる講義が展開されており、課外でゼミをご指導頂く機会にも多く恵まれました。
(2)また、私は司法試験に三振(当時)した失権者であることを入学初日からカミングアウトすることにしました。これにより、自分にプレッシャーを与えモチベーションを維持することができると考えたからですが、同じような学修経験者の方との情報交換を通じ軌道修正をすることができた等のメリットがあったと思います。
(3)有職者社会人が、法科大学院を修了し司法試験に合格するためには、いかに勉強時間を確保していくかが鍵になると思われます。私個人の経験として、勤務先の商材でもあるクラウドのリモートワーク・システムを日常業務でも使用していたことから、柔軟に仕事と通学を両立できたという利点がありましたが、勤務先の上司や同僚が休暇を取得する際には積極的にバックアップし、代わりに自分の定期試験時には業務の調整をお願いする等の工夫をしていました。
(4)同級生との自主ゼミについては、特に年次の浅い時期に組むことが有効であると思います。同級生との交流を通じ法科大学院生活を軌道に乗せることができ、早い段階で他人の答案を読むことで自分の悪い癖を修正できる等の効果を期待できるからです。ただ、年次が上がるにつれ、受験を意識せざるを得なくなりますので、自分の弱点や課題を分析したうえで、自主ゼミや学内外の答案練習等を活用していくことになると思われます。

4.法科大学院修了から司法試験受験まで
(1)私が本学を修了した年の令和2年度司法試験はコロナ禍で延期となってしまい、仕事の調整をすることができず、修了初年度の受験を見送ることになってしまいました。そこで、翌年度の試験に勝負をかけることにしましたが、受験した同級生の方々からヒアリングを行い、以下の方針を立てました:
・広く浅く、出題可能性のある条文・重要論点の穴を可能な限りなくし、各科目確実に得点する。
・予備校の有効活用(本学の授業レジュメと予備校教材を融合し、まとめ資料を作成した)。
・憲法、刑法の短答対策の勉強を必要最小限とし、論文対策の勉強を通じ短答の基礎力を養成した。逆に民法は論文対策の勉強を必要最小限とし、短答対策を通じ条文・論点の穴をなくすように努めた。憲・民・刑の勉強を可能な限り効率化し、その分他の科目の勉強時間を増やすようにした。
・コロナ禍で完全在宅勤務に移行し可処分時間が増加したことを最大限活用し、また、受験前年から勤務先と交渉し、受験前10週間はStudy Leaveと称する休暇を取得できた。
(2)ただ、反省点として、在学中から受験を意識し、本学で配布される教材やレジュメを整理し、まとめておくべきだったと思います。講義で扱う内容で司法試験に対応可能ですので、在学中から膨大な資料を整理していく過程で、知識や思考も整理するように努めれば、法科大学院修了から受験まで効率良く対応できるように思われます。また、加齢による記憶力、集中力、体力の低下に対し、効果的な対策をすればよかったと思います。受験本番も体力勝負であるため、特に定期的な運動等により体力維持に努めるべきでした。

5.終わりに
近年の司法試験合格実績から、筑波大学法科大学院は、勉強時間が限られている有職者社会人を司法試験合格へと導くノウハウが日本一蓄積されているロースクールであると考えられます。まず、この点をしっかり理解し、自分の学修や受験対策のなかで、本学をいかに有効に活用し、本学での経験をいかに自分のものにできるかが重要であると思います。入学をご検討中の皆様には、まさに多士済々といった様々な経歴を持つ同級生と交流を重ね、切磋琢磨して頂ければと思います。仕事と通学の両立は容易ではありませんが、健康に留意され、苦しくも楽しい学修生活を送って頂き、是非とも司法試験を突破してください。皆様のご健闘を心からお祈りしております。