令和3年1月司法試験合格 浅木 信也さん

2008年3月 東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻修了
2017年4月 筑波大学法科大学院未修コース入学
2020年3月 筑波大学法科大学院未修コース修了
2021年1月 司法試験合格

1.入学のきっかけ
 2012年に弁理士試験に合格しました。その後、弁理士の研修で弁護士の先生と関わる機会があり、そこで弁護士の先生方に比べて法律の知識が圧倒的に欠けていることを痛感しました。その原因が法律を体系的に学んだ経験がないことにあると考え、法科大学院への入学を検討しました。そして、講義が夜間・土曜日にあり仕事と両立して学べること、職場や自宅からのアクセスしやすさから、筑波大学法科大学院への受験を決めました。

2.在学時の勉強方法
 普段は仕事と授業で手一杯という状態で、予習・復習含む学外での勉強時間の確保がなかなかできませんでした。そして、テスト前に焦って勉強を始め、なんとか乗り切るということを繰り返していました。在学時にとにかく気を付けていたことは、留年しないことでした。会社員である以上、転居を伴う異動が発生する可能性があり、そうなると物理的に筑波に通うことができなくなってしまうため、筑波に長く在籍することはリスクが高いと考えたからです。そのため、テスト期間中も得意科目を伸ばすというよりは、その時点において最もD評価となる可能性の高い科目を勉強し、最悪でもC評価まで底上げするという方法を採っていました。そのおかげで在籍した3年間でD評価を2回(いずれも再試験でC評価)に抑えることができ、留年することなく修了できました。
 なお、勉強のタイミング・科目・内容等につき、自分のペースで勉強したいという思いが強く、テスト前の単発の対策講義を除きチューターゼミは利用しませんでした。

3.修了後から司法試験までの勉強方法
 修了後は仕事が忙しく、ほとんど勉強時間が取れなくなり、平日は1~2時間/日、休日は3~6時間/日といった程度でした。そのため当初の計画に対して勉強が遅れ、知識のインプットが不十分であったことから、過去問や問題演習といったアウトプットに移行できず、司法試験までインプットが100%でした。インプットの方法は、薄めの基本書と条文を繰り返し読むといったことでした。
 司法試験の5日前から休みを取ることができました。その時点では勉強時間が圧倒的に足りていないという印象で、今年合格するのは厳しいという感触でした。しかし、司法試験のチャンスは1年に1回だけであり、この時点で諦めるのはもったいないので、最善を尽くすことを決めました。とはいえ、合格が厳しいのは事実だと思っていましたので、戦略としては、「最低限短答には合格する」としました。短答に不合格となると、論文が採点されず、司法試験における自分の答案の評価を知ることができません。そうすると、来年の司法試験の論文試験に受かるために、何が足りないのか、何を努力すべきであるのかといった点がわからず、来年の司法試験にも不合格となる確率が高まると考えたためです。
 直前の勉強内容は、判例百選暗記(事案の概要と判旨)、憲法、行政法、民法、刑法、特許法、著作権法については全条文暗記(どこにどういった条文が書かれていて、法律要件を何となく覚えているといった程度)、条文数が多くかつ読みづらい会社法、民事訴訟法、刑事訴訟法は重要そうな条文に絞って暗記しました。直前に覚えた内容は試験中くらいは覚えているものなので、試験に不要なものは鞄にしまうようにといった具体的な指示が出るまで勉強していました。

4.最後に
 司法試験に合格できたのは、以下の3点と思っています。①普段のメールにおいても法的三段論法を意識して作成していたこと、②条文をしっかり読んでいたこと、③司法試験の各科目の試験が開始されるまで諦めることなく勉強していたことです。①については、勉強時間では専業の学生には絶対に勝てないと思います。社会人が専業の学生に勝っているのは文章力だと思っています。それは、仕事において日常的に報告文書やメールを作成しているからだと思います。特に頻度の高い仕事メールで論文試験を意識して作成すれば(法的三段論法、原則・例外の明確化)、論文の書き方の基礎は自然と身に付くと思います。②については、憲法、行政法(行政手続法、行政事件訴訟法、行政代執行法)、民法、刑法、特許法、著作権法は全条文を繰り返し読んでいました。論文試験中は六法で条文を参照できますし、勉強が無味乾燥しがちとなるので、後回しにしがちと思います。しかし、法律論は条文から始まるはずですし、知らない条文を試験時間中に六法で探すことなど無理です。少なくともどの辺りにどのような条文があったかといった程度まで覚えていなければ、試験時間中に適切な条文を探すことはできません。③については、試験直前に勉強した内容は少なくとも試験時間中くらいは覚えていると思います。判例百選に掲載されている判例は、各科目で5個くらいは問題を解くために使うのではないでしょうか。そうであれば、前日までにある程度判例百選を理解した状態にしたうえで、試験開始直前に判例百選を一冊読み返しておけば判例の規範はほぼ再現できると思います。
 勉強方法は好みや合う・合わないがあると思いますので、上記の私の勉強方法はあくまで一例としてそれぞれ自分に適した方法で勉強するのがよいと思います。しかし、試験直前まで諦めず勉強することは普遍的に必要なことと思いますので、皆様も試験開始まで諦めずに司法試験に臨んで頂ければと思います。