- 1981年 東大法学部卒
- 2011年 入学
- 2017年 卒業
- 2017年 司法試験合格
1 略歴
私は、大学卒業後、東京銀行という金融機関(後に合併して三菱東京UFJ銀行)に就職して約30年勤務、その後は金融庁に転職して3年と少し勤務した後、2014年にこちらも退職しました。筑波大学法科大学院の入学年は2011年でしたが、直後に3年間休学し、2014年度から実際に通い始めました。
2 入学の動機
入学の動機は、第2の職場探しでした。銀行では、50代に入ると一部の人間を除いて転職の斡旋が始まります。私の場合は、斡旋を受けながら、転職先の候補として弁護士を視野に入れたわけです。最終的に、筑波大学法科大学院の合格と、金融庁への転職がほぼ同時に決まったことから、最初は金融庁に通いながら通学するつもりでした。ところが、金融庁では案に相違して地方勤務が多く、出席日数が確保できないことが判明し、3年間の休学を余儀なくさせられました。その後、休学可能期間の限度である3年が経過するのを前に、自分の判断で仕事を続けられる弁護士を選ぶことにして、2014年の4月から、実際に筑波大学法科大学院に通い始めました。
3 勉強について
出身は法学部とはいえ、卒業したのは三十数年年前で、今回取り寄せた学部時代の成績表をみても優がほとんどなく、卒業後の仕事も、もっぱら為替や資金の取引いったいわゆる市場関係ばかりで、法律の条文に接する機会はありませんでした。起案というものも、一年時の春学期のミニテストが初めてで、どんなものを書けばよいのかもわからず、起案の形にもなっていない答案を提出して、お情けでもらった評価が10点満点中の4点でした。
こんな状態で始まった勉強ですが、時間だけはあったので、2回生までの授業で使用する教科書を一式買い込んで全教科を通読、その後、ローライブラリーの基礎力養成テストを全教科全問正解するまで繰り返しました。人によって、予習型と復習型の向き不向きはありますが、私にとっては、自力で理解することが困難な部分を、授業中やその後の質問で教えていただける予習型が向いていたようでした。
それでも、起案の具体的な方法は、筑波の相対的に短い授業中に教わることはなかなかできず、スタンダード100等の起案例を利用して、先生方が口を酸っぱくする法的三段論法らしきものを少しずつ身に着けてゆきました。
4 ゼミについて
実力を身に着けるために、一番役に立ったのはゼミでした。
筑波では、卒業生の司法試験合格者を中心に、いろいろな教科を教えていただけるチューターゼミという制度があります。1年から3年までそれぞれの学年のレベルに合わせ、また、参加する生徒の要望を入れて、柔軟にカリキュラムを変更して教えていただけます。
さらに、自主ゼミも有力な手段です。私は、入学早々3年間休学したことから同期生は実質的にいませんでしたが、2014年度生の皆さんに、仲間扱いしてゼミに誘っていただいたので、参加させてもらうことができました。自主ゼミは、ある程度の人数が揃って実施すれば、教員の先生方が参加して指導してくださいます。課外の指導は先生方の義務ではありませんが、皆さん時間の許す限り、付き合ってくださいました。
特に、1・2回生の授業では試験以外に起案の機会が少ないことから、法的三段論法を駆使した起案になれるためにも、ゼミはお勧めです。
また、ゼミを通じて知り合った仲間とは、お互いに助け合ったり励ましあったりして、精神的に不安定になりがちな試験勉強を乗り切るのにも助けになります。
5 受験対策について
確実に点を計算できる科目があれば有利ですが、短答式と選択科目で稼ぐことを目指してください。
短答式は問題数が多いので、論点を外して大失敗という可能性が低いです。また、選択科目は、他教科ほど複雑な論点は出題されませんから、勉強時間が取れれば、得点を伸ばせます。
6 予備試験について
予備試験は、受験をお勧めします。
司法試験では、短答式は3教科に絞られましたが、その他の教科の論文試験の中でも短答式の知識が前提となるもの出題される可能性が高いので、勉強しておけば、論文式で的外れの答案を作成するリスクを回避することに役立ちます。
また、短答式試験に合格した場合、論文の採点をするのは司法試験委員の方々なので、その目線で、自分の答案レベルを客観的に評価してもらうことは、貴重な機会です。
私も、論文では、憲法と民事訴訟法が、2年続けてE・F評価だったので、司法試験を受験する前に、評価の低い理由を検討することができ、結果として本番では両科目ともA評価となりました。
7 受験予備校について
受験予備校と2足のわらじを履く学生もいましたが、私は、3年の授業が終了するまで、講義は筑波の授業のみでしたが、それで十分、実力はつけられると感じました。
授業が実質終了した年末からは、起案の機会を確保するために辰巳の答練に参加しました。
この答練では、採点基準が論点とあてはめ中心で、私には、法科大学院での評価基準と異なるように感じられ、ボロクソな評価が続き、落ち込みもしましたが、一方で、違う基準でも評価される答案の書き方を考える機会にもなりました。
しっかり自分をもって、良いところを取り入れることができる人にはお勧めですが、気の弱い方は、本試験前に落ち込まないように気を付ける必要があるでしょう。
8 最後に
自分の経験から、司法試験に合格するためには、筑波大学法科大学院の先生方の授業を受講に加えて、自主ゼミやチューターゼミ等で補うことで十分だと感じます。
また、比較的高年齢の方でも、諦める必要はありません。略歴で分かる通り、還暦受験をした私の場合も、思考速度や記憶力の減退は確かにハンデにはなりましたが、民事系科目等では社会人経験をメリットにすることもでき、結果として合格することができました。
司法試験に合格することは、自ら、新たなキャリアを形成することです。そして、筑波大学の法科大学院は、その為の有力な選択肢です。皆さんが、筑波大学の法科大学院において、是非とも目標を達成されることを、心からお祈り申し上げます。
以上