1.はじめに
私は、大学の法学部を卒業の後、現在も特許事務所へ勤務しておりますが、この間、弁理士試験を6回も受験し、2000年ようやくこれに合格しました。その後、一定の範囲で訴訟にも携わるなど、弁理士として経験を積む中、自然と法曹の資格にも目が向き、2010年筑波大学法科大学院へ入学しました。ここには私のような経歴の方も少なからず居り、毎年のように弁理士の方が入学しているようです。
2013年の卒業から大分時間が過ぎてしまいましたが、司法試験には本2017年に最後の受験機会でようやく合格しました。
2.法科大学院での学生生活
私は法学部出身とはいえ、法律学習の基礎がなっておらず、特に刑事系は初学者であったため、大学院での学習には辛かった思い出も多いです。この辛さは、通常の法科大学院のカリキュラムを夜間を中心に修了しなければならないことからすれば当然であり、日々の予習や、ままならない復習を慌ただしくこなすうち、定期試験の時期が訪れるという、今思えば3年間を通じて大変忙しい学生生活でした。単位取得やGPAのクリアに汲々とするような私は褒められた学生ではありませんでしたが、仕事を続けながら法科大学院へ通うということは、やはり相当な覚悟が要るのだと思います。
そのような学生生活を送りながらも、私が司法試験合格という最終目標を達成できたのは、もちろん法科大学院での学習にその基礎があります。当時は未修者コースのみでしたが、そこで基本から体系立てて法律学習をおこなうことで、司法試験へ臨むにあたっての基礎力を十分に養うことができます。非法学部出身のクラスメートらが、司法試験合格という目標を達成してゆく姿を何例も見ています。
上記のとおり、私は卒業してからの方が勉強期間が長くなってしまいましたが、日々の勉強をしている中で、法科大学院での授業の光景を思い出すことがよくありました。それは、先生のお話しされる授業内容であったり、クラスメートや自身の発言の内容であったりしました。意識して能動的に授業に参加している人は、体験的に知識が身に付いて行くことも多いと思われ、私はそのようなことに後から気付くとともに、これからの方には限られた授業の機会を有効に活用してもらいたいと思います。
授業のほか、判例学習や司法試験の過去問検討など、修了生に指導してもらえるチューターゼミ等には種々参加させていただきました。私は知的財産法が司法試験の選択科目でしたが、特に在学中は選択科目に取り組む時間は殆どありませんでした。しかし、そのような中で選択科目のチューターゼミを定期的に開催いただき、私はそれに頼り切り、何とか選択科目の勉強の機会も得ることができました。
3.卒業後
私は卒業した年からさっそく司法試験に挑戦しましたが、3回連続で不合格となってしまいました。在学中の生活としては上記のとおり常にばたばたとしており、計画的な準備も整わないまま1回目の受験に臨み、結果不合格ということを3回繰り返してしまった印象です。
択一試験は何とかクリアするものの、論文試験は大概が時間切れで、尻切れトンボな答案も多かったと思います。ただ、択一を通ると、もしかすると論文も通っているのではないかと夢想し、最終合格の発表まで身を入れた勉強ができず、次の本試験までの準備期間を無駄に浪費し、結局また準備不足で不合格の憂き目を見る、ということを繰り返しました。
続く4回目も受験するつもりで、やはり不合格から準備を始めましたが、その頃から急激に仕事が忙しくなってきました。仕事は充実する一方、勉強はできず、おそらく頭が勉強に向いていなかった結果、本試験のための願書を出し忘れるという失態を演じてしまいました。決して諦めてやる気を失った訳ではありませんが、受験生活が長引くと、気も緩んでしまうのかもしれません。
しかし、これにより、その次の本試験まで時間的余裕ができたことも事実で、その点は肯定的にとらえるようにしました。忙しいながらも、1年以上の準備期間をとれたことで、これまで疎かにしていた過去問を中心としたアウトプットの勉強を計画立てておこなうことができ、怪我の功名ながら、最終的に合格へ辿り着くことができたと思います。
4.おわりに
自身の顛末を振り返ると、これから取り組む方々には、大学院での時間を有効活用し、司法試験合格を目指すのであれば、在学中から過去問などを中心に事前準備をしっかりおこなっていただきたいと思います。
などと言うことは簡単ですが、仕事や家庭、家事・育児がある中、誘惑にも負けず、学生生活や受験勉強に取り組むことは、筑波の学生にとってはやはり大変なことだと思います。こうした制約は一面で同情や成功した際の賛美を生みますが、生活の心配が少ない分、他面で甘えも生むと思います。これから社会人として筑波で挑戦される方には、月並みですが、困難にめげず粘り強く、目標に向かって頑張って行って欲しいと思います。