新川 政広さん

  • 2005年 早稲田大学政治経済学部卒業
  • 2015年 筑波大学法科大学院(既修)入学
  • 2017年 司法試験合格

1.筑波大学法科大学院入学に至る経緯
私は、大学卒業前後に弁護士になるべく旧司法試験を受験しましたが合格することができず、経済的な理由もあり一旦は司法試験をあきらめました。
その後、保険会社に入社、法務を担当し、司法試験とは無縁の生活をしていました。その後、結婚し子供が生まれ、その将来を真剣に考えているうちに海外に移住したいと思うようになりました。
海外に移住するにしても、失敗した場合の保険が必要です。そこで、それまでのキャリアに鑑み弁護士資格取得を再度目指し、法科大学院に入学することを決意しました。
筑波大学を選んだ理由は、学費が安く、仕事をしながら通学することができるため、経済的なロスを抑えられたからです。また、既修者コースが創設され、比較的短期間で司法試験受験資格を得ることができるようになったことも魅力でした。

2.入学から修了まで
入学後の一年目は忙殺されていました。育児、仕事、勉強に追われ、体調を崩すこともしばしばありました。私は既習といっても基礎の理解が十分でなく、授業についていくのがやっとの状況でした。一年目に単位を落とした必修科目もありました。
そのような状況で、このままでは合格はおぼつかないと思い、2015年いっぱいで会社を退職することにしました。
退職後は、平日は図書館で勉強し、週末は予備校の答練や家族と息抜きという感じで、次第にリズムが出来上がっていきました。

二年目は、比較的淡々と過ぎていきました。仕事を辞めたことで時間に余裕ができたので、授業についていくことがきつかったということはありません。もっとも、仕事を辞めた手前、必ず司法試験に受からなければならないというプレッシャーが重くのしかかってきました。
予備試験を受験しましたが、論文試験で不合格となりました。敗因は端的に基礎的な部分の理解が足りなかったためです。ここで自分の実力不足を痛感したことにより、それまでの基本書等の通読から論文試験の過去問を中心とした学習にシフトしました。
一年目に落とした必修科目も無事単位を取得し、修了を迎えました。

二年目に入り、勉強後のリフレッシュのために大学院の隣の区民プールで泳ぐようになりました。これは勉強の疲れを取って次の日への英気を養うのにとてもよかったと思います。

3.勉強
(1)スタイル
基本書、判例集、過去問を使った勉強をしていました。いわゆる予備校本は過去問集以外使いませんでした。理由は、基本書、判例集、過去問が司法試験勉強の王道と思っていたからです。各々、最低でも司法試験までに2回は回せるように細かくスケジュールを立てて取り組み、授業よりも自分の立てたスケジュールを優先していました。
また、ゼミ等には参加せず終始一人で勉強しました。理由は、集団でいると堕落しやすい自分には一人での勉強がより効果的と思われたからです。

(2)経過
合格を見据えた本格的な勉強は、仕事を辞めた後の2016年1月から開始しました。ここから8月までは過去問を解かずに基本書、判例集を通読していました。しかし、ただ通読するだけではメリハリが効かず、効果は低かったように思います。最初から過去問を解いて抑えるべきポイントを絞っておけば良かったと悔やんでいます。

予備試験後の9月から、毎日まず論文試験の過去問を1問、時間を計って解くことにしました。解いた後は、出題の趣旨、採点実感、優秀答案を熟読し、抑えるべき論点、論証や評価のポイントを探り、該当箇所について基本書を読み理解を深めました。過去問を実際に解き優秀答案と比較することで、自分に足りないものを洗い出すことができます。足りないものが洗い出されると、的を絞って効果的に学習することができます。筆力も鍛えられます。過去問を解くことが合格への最短の道です。過去問が終わると、基本書、判例集の通読を再開しました。
 
2017年1月からは択一の勉強も並行して行いました。予備校の過去問集を一日12問~15問、1時間程度で解き、過去問集を二回回しました。解く時間は疲れて集中力の鈍る夜にしました。正誤がはっきり出る択一は夜でも集中しやすいからです。

大学院修了後からの直前期は、土日も勉強するようにして追い込みました。直前の模試では合格判定がでませんでしたが、模試と本番は違うと開き直って焦りませんでした。本番の一週間前には、直近の過去問を本番と同じスケジュールで解き準備しました。

(3)勉強においてこころがけていた点
①条文や判例を、具体的な適用事例、事実と共に理解しておくこと
→この理解によって、合格に最も重要と思われる「スジを外さない答案」を書けるようになると考えました。
②条文の趣旨を覚えること
→条文を解釈する上で最も重要なよりどころが条文の趣旨であるため、条文の趣旨を抑えておくことが不可欠と考えました。
③理由付けを意識すること
→条文と確立された判例以外の規範を定立する場合、事実を規範に当てはめる場合は解答に説得力を持たせるため、一言理由を付けるように心がけました。
④書くこと
→文章構成力、筆力の向上、維持のためです。
⑤十分な睡眠
→勉強ではいかに集中力を持続させるかがとても重要であり、集中力を持続させるには十分に睡眠をとることが不可欠と思われます。受験勉強中は6時間睡眠を基本としていましたが、もっと寝たほうが良かったと思っています。
⑥択一をおろそかにしないこと。
→択一は足切りがある他、論文と違い単純に得点が積みあがるので、他の受験生との差をつけやすいです。また、論文よりも努力が得点に反映されやすいと思います。民法の比率が高いため、民法の勉強が重要です。

4.おわりに
私は司法試験のために仕事を辞めました。これは相当の冒険であり、あまり人にお勧めできるものではありません。しかし、仕事を辞めていなければ今回の合格はなかったと思います。退路を断って背水の陣で臨む。不器用な私にはこのやり方が良かったのかもしれません。私の体験がこれから司法試験を目指す方の参考になれば幸いです。

以上