4期修了生 長期履修制度を利用した司法試験合格者からのメッセージ

私は、筑波大学法科大学院(以下、「本学」と言います)で長期履修制度を利用して卒業した修了生です。運良く卒業した年の司法試験に合格できました。理系出身で全くの法学未修者だった私が、司法試験に1回で合格できた大きな要因として、長期履修制度を利用したことがあると考えています。そこで、以下に長期履修制度の概要やメリットなどについて書かせていただきたいと思います。

1 制度の概要
(1)本学の長期履修制度は、入学試験の合格発表後に、通常の入学手続きと合わせて申し込みます。したがって、出願時に長期履修にするかどうか決めなくてもよいようになっています。他校では、入学試験の出願時に長期履修の希望を申し出るところが多いようです。本学の場合、入学手続き締め切りギリギリまで、仕事の状況などを見極めたうえで長期履修を申し込むかどうか決定できるメリットがあります。
(2)4年間の履修計画を長期履修制度申し込みの際に提出しますが、絶対にその通りに履修しなければならないわけではありません。履修計画は、長期履修するにあたり、学校側から履修のアドバイスを受けるためのものです。実際、私も当初提出した履修計画とは異なった履修状況になった科目が少なからずありました。末尾に私の実際の履修実績をのせておきます。履修計画としては、できるだけ基本科目から積み重ねていくのが望ましいですが、個人的には演習科目を先取りしてから基本科目に戻ってくる科目が多少あるのも悪くないとも思います。結局は仕事との調整でその年に取り得る科目を履修していくことになるでしょう。

2 メリット
(1)時間のない社会人にとって価値の高い制度
本学の学生の職種や仕事内容は実に様々で、始業時刻に連日間に合うように仕事を調整するのが難しい方も多数おられると思います。長期履修制度を利用すれば、1週間に来るべきコマ数を標準年限のそれにくらべて75%に縮減できます。たとえば、土曜のほかに、平日を3日もしくは2日程度の出席でまかなうことも可能です。
(2)記憶の定着に有利
3年間で習得すべき法律の知識はとても膨大です。また、単なる丸暗記ではなかなか司法試験レベルの問題に対応できません。知識を本質的なところから、有機的に、効率よく身につけていくことが司法試験突破のカギとなります。しかし、全くの法学未修者が3年間で知識を自分のものにしていくのは大変なことだと思います。その点、4年間の履修期間であれば、より長期間に同じような知識に繰り返し触れるため、無理なく知識を定着させていくことが可能になります。
(3)学生生活上のメリット
長期履修生は人数が少ないので、先生方に早く名前を覚えていただけたり、何かと気にかけていただけるメリットがあります。私も、折に触れて、履修状況はうまく行っているかと多くの先生方に気にかけていただきました。また、2学年にわたって履修するため、より多くの方と知り合いや友人になれるメリットもあります。本学は学生には様々な職種の方がいます。学生生活自体が一種の異業種交流会のような側面があり、より多くの学生と知己になれることは将来にわたる大きな財産になると思います。

3 まとめ— 「急がば回れ」
本学への入学を考えておられる方の多くは、社会人としてのキャリアをある程度積んで来られた方がほとんどだと思います。実際、入学者の入学時の平均年齢は多くの期で35歳前後になっています。入学時にすでにかなり年を取っているのだから、一年でも早く卒業し、司法試験に合格したいという気持ちは十分理解できます。
また、すでに法律をある程度マスターしている方であれば、長期履修に躊躇があるかもしれません。
しかし、全くあるいはほとんど未修という方は、逆に履修期間を伸ばし着実に知識を定着させることで、卒業後は早い段階で司法試験に合格することが可能になると思います。あせって詰め込みで3年で終えて、結局自分のものにできずに司法試験に突入することはかえって受験期間を長くする危険性があります。というのも、学校を出てしまえばペースメーカーになるものがなく、自分のペースで勉強をこなしていくしかないうえ、(職場に通学を伝えていた場合は)配置や就業時間など職場での配慮がなくなってしまい、学生の時ほど勉強時間を確保することが難しくなる方が多いからです。
正直申し上げて、仕事をしつつロースクールに通い、司法試験に合格するというのは相当大変なことだと思います。特にこのご時世に、仕事に多大な影響を与えるような形での通学は人生設計上もお勧めできません。また、本学に通う学生は結婚して家庭のある人もたくさんいます。だからこそ、仕事と勉強と家庭のバランスをとりつつ通える長期履修はとてもお勧めの制度だと思います。
人生80年時代ですから、1年くらい長く学生をやっても、法曹資格を得てから活躍できる期間は十分にあります。多少時間がかかっても法曹として活躍する夢を実現させればいいのです。まさに「急がば回れ」です。
最後に、自分の反省もこめて試験対策について少し触れます。一般の学生が司法試験対策モードになる3年生の時に、自分も過去問を解いたり、問題演習に参加したりすると、より余裕をもって最終学年を迎えることができると思います。私の場合、自分が3年生の時はまだ司法試験はだいぶ先だからと、それまでと変わらない生活を続けてしまいました。3年生のときに、せめて短答対策だけでも始めていれば・・・と直前期に大変後悔しました。今後長期履修で入学される方は、3年生になった時には是非、周りの学生の緊張感にうまく乗っかって、早いうちに試験対策を始められることをお勧めします。そうすれば私よりもっと余裕をもって司法試験を迎えられるでしょう。
長くなりましたが、どうか様々な職種、経歴の方が、長期履修制度の利用も視野に入れられ、本学の門をたたき、リーガルマインドを身につけ、広く社会に貢献できる法曹になられることを願いまして本手記を終えさせていただきます。最後までお読み頂きありがとうございました。

4年間での履修科目