- 筑波大学法科大学院 平成21年入学・5期生
- 平成25年司法試験合格
- 地方公務員
1.はじめに
私は,4年制の私立大学を卒業後(法学部卒。ただし,旧司法試験受験歴なし。),地方公務員となり,平成21年に本学に入学しました。仕事を継続しながら本学に通い,平成24年に修了し,翌年の司法試験に合格することができました。
私は,1回目の受験は短答式試験は通過したものの総合では不合格になり,2回目の挑戦での合格であるため,働きながらの長い受験生活でしたが,最終的に良い結果を得ることができた一因は本学の学習環境にあると思いますので,その点を中心にお話させていただきます。
2.社会人に配慮した学習環境
国立で唯一の社会人対象の法科大学院である本学は,社会人が学びやすい環境が整備されています。まず,ハード面について,第一に立地の良さがあげられます。私が在学中の3年次の1学期まで(※当時は3学期制)は秋葉原駅から徒歩1分のビル内にあり,茗荷谷に移転してからも駅から徒歩3分という好立地に学校があったため,仕事が終わってから急いでかけつけなければならない社会人にとって,ドアツードアの時間を短縮できたことは有り難かったです。また,24時間利用可能な法曹専攻者専用の自習室が用意されています。私は,授業後に,自習室を利用し,23時頃まで予習復習や司法試験の勉強をしていました。自習室のすぐ隣が図書館となっており,主要な法律系の文献は揃っていますので,何か疑問点があるとすぐ調べられることができ大変便利でした。
次にソフト面について,私は他の法科大学院の授業状況は分からないので他校との比較はできないのですが,先生方は授業ごとにレジュメを用意してくださる等,仕事上遅刻や休まなければならないこともある社会人学生への配慮がありました。また,自分で問題演習して起案したものを見ていただくことを個別にお願いしても快く引き受けていただきました。自分だけではなかなか気付かない点を客観的に見ていただいたことで法律文書の書き方が身に付いたと思います。さらに,実務家の先生によるチューターゼミの制度があります。チューターゼミの内容については,学生側の要望を取り入れてくれますので,私は,自分の弱い分野や手薄になりがちな選択科目についてチューターゼミをお願いしました。司法試験を突破したノウハウを持つ実務家の先生の指導は大変有益であり,試験を意識した学習をすることができました。司法試験対策という点では,法科大学院の授業だけで対応するのはなかなか難しい面もありますが,学校が提供する資源を積極的にフル活用することで,合格することができる基礎力を得ることができたと思います。
なお,修了後のサポートとして,法曹学修生という制度があります。同制度は,修了後においても司法試験受験のための学習環境を提供するもので,同制度を利用することにより,修了生も自習室や図書館,自主ゼミ用のゼミ室等の学校の施設が自由に使えます。私は,同制度を利用し,修了後も,土日は自習室にできるだけ通い試験勉強を行うとともに,ゼミ室に同期生で集まり,起案の練習をする自主ゼミを行いました。私は,司法試験の最大の難しさは1科目2時間(選択科目は3時間)という時間制限にあると考えており,1回目の受験で不合格になった主要因のひとつはこの点に対する意識が低かったことにあると考えています。不合格後の自主ゼミにおいて,制限時間内で書ききるという練習ができたことは大変役に立ちました。修了生にとって学習環境を確保することは一つの課題ですが,私は,同制度のおかげで在学中に引けを取らない学習環境を得ることができたと思います。
3.おわりに~モチベーションの維持がなにより重要
仕事をしながらの通学・受験生活はいろいろと厳しい面もありますが,弁護士の就職難が言われるこのご時世において,仕事を辞めずに法曹資格を目指せるという点は,本学の大きなメリットであると考えます。こういうことを言うと,仕事を辞めず働きながら司法試験を目指すには予備試験ルートがあるじゃないかと言われそうですし,確かに近年予備試験の合格者は増えてきている現実もあります。
しかし,私は,本学を通じて,合格に至るまでモチベーションを欠くことなく学習ができたからこそ合格できたと思っています。司法試験の勉強は相当長期にわたるものですので,いかにモチベーションを維持するかが最重要事項であると考えます。社会人である以上,仕事を優先しなければならないため,勉強に対するモチベーションを維持することはすごく大変です。特に意志の弱い私にとっては,独学では勉強を続けることはとてもできなかったと思います。大学院に通ってある程度勉強しなければならないような環境に自分を置き,先生方からのご指導を受けつつ,社会人という同じ境遇にある仲間と切磋琢磨しながら同じ目標に向かって学習することで,なんとかモチベーションを維持できました。このような観点からも,社会人用の法科大学院の意義は大きいと思います。いろいろな事情で夜間大学院に通うことはできない方はやむを得ないと思いますが,そうではない社会人の方で法曹資格を目指したいと考えている方は,一つの選択肢として本学への進学を考えてみてはいかがでしょうか?
最後に,これまで応援してくださった先生方,同期の仲間,職場の仲間や家族にこの場を借りて感謝申し上げるとともに,これから受験をされる皆様が良い結果が得られるよう,心からお祈り申し上げます。