田村菜生子さん

 

2004年立命館大学文学部卒業

2009年筑波大学法科大学院入学

2015年司法試験合格

 

1 法科大学院への入学まで

 私は2004年に立命館大学文学部を卒業後、関西の不動産会社で経理を行っていました。大学在学中法律関係の科目は一切学んでいません。宅地建物取引主任者資格を取得した際に独学で学んだ民法が法律の知識のすべてでした。しかし、仕事の中で上場準備等に関わる機会のあったことや、士業の事務所で勤務する中で、法律関係の仕事に興味を持つに至りました。また、ちょうどその当時、司法試験の形が大きく変わった時期でもあり、未修からであっても、法科大学院を修了することで司法試験を受験し、法曹となれる道の広がった時期でもありました。そこで、法科大学院へ入学し、将来は法曹として活躍していきたいと考えるようになりました。

 2 筑波大学法科大学院の特性

 法科大学院への入学を考えたとき、実家付近には法科大学院がなかったため、一人暮らしで通学し修了する必要がありました。そこで、調べていく中で社会人大学院である筑波大学の法科大学院の存在を知りました。実際、以下の三点の理由で社会人大学である筑波大学法科大学院への入学は自分にとってよい選択であったと考えています。

(1)就業しながらの修了が可能であること

 筑波大学の授業は、火曜日から金曜日の夜間と土曜日一日を利用して三年間で修了することか可能です。社会人として就業しながら法科大学院を修了できることで学費や生活費を自身でまかないながら修了することができました。また、私自身は、入学の際に上京する必要があり、入学時に転職先を探すことにはなりましたが、通学の可能な範囲で勤務している方であれば、現在の就業環境を維持しながら修了することも可能です。実際、同期も大多数が入学前からの就業環境を維持したまま修了しています。

(2)様々なバックグランドを持つ同期の存在

 社会人法科大学院であることから、様々なバックグランドを持つ方と一緒に学習することができました。実際に実務で法務関係の仕事をされている人、また、専門分野の深い知識を有している人等と出会える機会があったことは自分自身の今後の進路を考える際にとてもいい経験となりました。 法科大学院在学中はもちろん、修了後においても、先に合格した同期をはじめ先輩後輩と接点をもつことができ、受験生活を送るうえで必要な情報交換等様々な面で助けられました。

(2)メリハリをつけた学習

 学習時間自体は専業の受験生や法科大学院生と比較し、少なくなります。しかし、司法試験は、長く勉強したからといって合格できる試験ではありません。逆に、短い時間であっても、効率的にポイントを抑えた学習をしていけば、合格することは可能です。一日の学習時間が限られていることで、集中して学習を進めることもできました。

 修了後も三年間受験生生活を続けることにはなってしまいましたが、その間、就業しながら法科大学院在学中の生活サイクルを維持し学習してきました。そして受験生生活を合格という形で終えることができました。茗荷谷にある校舎では、広くきれいな図書館や、24時間使用できる自習室、ゼミの際の教室等、法科大学院の設備を利用することができたことも学習していくうえで役立ちました。少し私の受験勉強についてお話しします。

 

3 試験勉強中の学習方法

 在学中は、復習を中心に勉強していました。3年の3学期からは、仕事の通勤時間などの合間の時間を利用して、短答の過去問を回していました。 受験期間中も、少し空いた時間には、1問でも短答の問題を解くようにクセをつけてきました。間違った問題にはポストイットを貼り、自分はどこができないのかを可視化しておき、正解するとポストイットの位置を変え、少し時間が経ったら再度確認、という形でどこまでできるようになっているか、を認識できるようにしていました。修了後、受験期間の間、特に、毎年の試験の直前期には、休日・祝日などまとまった時間のある時は、司法試験用六法を使用して、2時間時間を図り、できるだけ実際の試験と同じ環境・条件で過去問の答案を書く練習をしていました。書いた答案は試験合格者の方に見ていただき、よかったところ、悪かったところを確認していただき、平日に関連項目も含め内容を復習しました。内容についてわかっていても、表現の仕方はうまく三段論法になっていないだけで、読み手の印象は大きく変わってきます。これまで見たことのない問題が出ても対応できるよう、常に三段論法を意識した答案の書けるように訓練をすることは合格への近道になると思います。

 

4 司法試験受験生の方へ

 私自身は、法科大学院在学中には、基礎の部分をおろそかにしてしまっていた部分があったため、修了後、合格までに三回の受験をすることとなってしまいました。しかし、合格した三回目の試験の際にも各科目参考にしていたものは法科大学院在学中のレジュメやノート、当時から使用していた基本書や演習本が主でした。そこで、合格の土台にはやはり法科大学院在学中に学んだことが活きていた、と実感しています。また、修了後にも先に合格していた同期や先輩の修了生の方々にどのような学習をしてきたかを聞き、自分の答案を見てもらい、合格答案となるために足りない部分はどこであるか等アドバイスをしてもらってきたことも大きな力となりました。

 正直、就業しながら法科大学院を修了することは今から考えるとなかなかハードな日々であったと思います。しかし、社会人としての生活を犠牲にすることなく、法科大学院で基礎から学ぶことで、完全な未修者であっても、司法試験に合格することは可能です。これから司法試験受験を考えられている社会人の方々にとって、筑波大学法科大学院は、選択肢のひとつとしてかなり有効だと思います。

これから、法曹へ向けての第一歩を踏み出される社会人のみなさまを応援しています。