中谷 百合子さん

  • 2017年 筑波大学法科大学院(未修)修了
  • 2018年 司法試験合格

1.はじめに
 私は、大阪大学経済学部を卒業後、大学院で公共政策を学んでいました。そして、研究活動をする中で(特に博士課程2年生の時に)、法律実務の重要性を目の当たりにする出来事があり、司法試験を志すことに決めました。

2.入学前
 非法学部出身であったため、いきなりロースクールに行くのはためらわれ、1年間予備校に通いました。そして、複数の法科大学院を受験し、既修コース2校および未修コース1校で全額免除の特待生に合格しました。筑波には既修コースは不合格で未修コースにのみ合格した状況でした。
 正直言うと学費免除や2年で卒業できるということは魅力的でしたが、「確実に司法試験に合格するためには学校選びが重要だ。お金や時間に惑わされてはいけない」と考え、筑波に入学しました。この決断を後悔したことは一度もありません。それほど、筑波での生活は充実していました。後で述べますが、予備校に行く必要なんてなかったなと思います。

3.入学後
 筑波の美点は、①学生に向き合ってくださる教員の存在、②学生の多様性と質の高さ、③カリキュラムに無駄がないことです。
(1)①について
筑波は少人数であるため学生と教員の距離が近いといえます。学生の顔、名前、得意科目、学習状況、性格などをきちんと把握してくださっていたことは本当にありがたかったです。これは、他のロースクールには無い恵まれた環境だと思います。
 私は一人で悩むのは時間の無駄だと思い、ことあるごとに先生の所に相談に行っていました。頑張っているのに期末の成績が悪かったとき、逆にあまり理解できていないのに成績が良かったとき等々、答案をもって行って相談し、勉強法の軌道修正をはかっていました。各先生が適切なアドバイスをくださったので、ものすごい安心感が得られました。
 また、学生同士で自主ゼミを組んで勉強していたのですが、学生だけだと自己満足に終わったり、議論が変な方向に行くこともあるため、先生方に時々時間をとっていただき、質問したりして確認したりしていました。どの先生も快く顔を出してくださった上、丁寧に説明してくださったので理解が深まり楽しんで勉強できました。
(2)②について
 同級生は年齢もバックグラウンドも様々ですが、いずれも社会人として第一線で活  躍している人なので話すだけでも楽しかったです。おまけに、多忙なのに愚痴らず粛々と勉強している人や、あまり勉強している気配はないのに抜群に成績のいい人などをみると、あれこれと言い訳をしている自分の未熟さを痛感させられます。
 加えて、皆さん親切なので期末試験のA+答案などをコピーをさせてくれました。これと自分の答案を照らし合わせると、自分の足りない部分が見えてきて有意義でした。また、ゼミを組んだ仲間はことあるごとに私の答案にダメ出しをしてくれ、自分の会得したノウハウを惜しみなく授けてくれました。受験は孤独との戦いであるとか同級生といえどもライバル同士とであるとかいうイメージを抱いている人も多いかもしれませんが、仲間と助け合い励ましあいながら共に合格を目指す団体戦なのだと思います。少なくとも私の周りの人はそうでした。
(3)③について
 多忙な社会人であることを考慮し、授業の説明はすっきりとしてわかりやすく、レジュメも工夫されていました。また、他校にありがちな無意味な宿題もなく、提出を求められる課題は真に必要なものだけでした。
 私は予備校に1年通いインプット講座を受講していましたが、入学後早々に予備校のテキストを捨て、筑波の授業レジュメを勉強の中心に据えました。授業の復習をしっかりやっていれば自然に力がつくし、満足いくレベルに達していないと感じたときは授業の録画を繰り返し見るなどすれば十分だと思います。そのおかげで、どんな問題が出ても動じることなく自分の考えを展開できるという自信がつきました。
 大雑把に言うと、1年生は基本知識の理解、2年生は演習、3年生は応用というふうになっていますが、3年生になった時点で司法試験の過去問を見たら、「案外簡単だな」と感じるくらいになっていました。1・2年の授業の復習を通じてどれだけ土台作りができたかが勝負なのかもしれません。
 また、各学年ごとに卒業生の弁護士を中心としたチューターゼミというものが設けられていました。アウトプットを意識した勉強は非常に役に立ちました。参加は任意ですが、積極的に参加していた人たちはやはり合格しているなという印象です。

4.最後に
 合格した先輩から、期末の成績と合否は相関関係にあると聞かされていましたが、実際、「学校の期末ならAだな」という感触だった科目は本試験でもやはりAがつきましたし、「学校ならBの下の方かな」という感触だった科目はCでした。このように学校の日々の勉強が合格に直結するといえます。これは、よき教員と優秀な仲間がいるからこそなせることなのかもしれません。
 これを読んでいる方は、司法試験に本気で合格したいと思っている方だろうと思います。合格には、適切なロースクールで適切な勉強をすることが必要です。その判断材料の一助になれば幸いです。