活躍する修了生 Vol.6

金融庁 竹渕智弘さんインタビュー[本記事の内容は、2020年12月5日現在のものです。]

金融庁
竹渕智弘さん
2018年3月修了
  • ご経歴
  • 2009年4月 金融庁入庁。証券会社や証券取引所の監督事務等に従事
  • 2015年4月 筑波大学法科大学院(未修コース)入学
  • 2015年7月 金融庁総務企画局総務課(現:総合政策局総務課)審判手続室係長
  • 2017年7月 金融庁総務企画局政策課(現:総合政策局総務課)訟務室係長(~2021年2月現在)
  • 2018年3月 筑波大学法科大学院修了
  • 2019年9月 司法試験合格

広報委員会(以下、広報委)

本日は、2018年に本学を修了され、2019年に司法試験に合格された竹渕智弘さんにお越しいただいています。まずは、竹渕さんが現在どのようなお仕事をなさっているのかお話いただけますか。

竹渕智弘氏(以下、竹渕)

竹淵2私は、現在、金融庁総合政策局総務課の訟務室という部署で係長をしており、金融庁の所掌事務に関する訴訟について、主に、国から裁判所に提出する各種書面案に関し、関係部署・関係省庁との意見調整を行いながら、組織としての意思統一を図り、実際に、国の指定代理人として法務局の職員とともに期日に出廷する役割を担っています。また、関係部署の人員や業務の繁忙状況等の事情により、法務局を通じて裁判所に提出される書面案の作成を自ら行うこともあります。金融庁の所掌事務に関する不服申立てについても同様に、事件処理を進める役割を担っています。

広報委

本学に通学されているときも、そのようなお仕事をなさっていたのですか。

竹渕

いえ、当時は庁内の違う部署で仕事をしていました。私は、2009年に金融庁に入庁したのですが、証券会社や証券取引所の監督業務などを経た後、通学時は、主に課徴金審判手続の運営に従事していました。

広報委

本学に入学しようと思われた動機はどのようなものだったのですか。

竹渕

金融庁は、組織自体が比較的新しく、金融という専門性の高い領域を扱っていることもあるのか、法曹三者出身者を含む専門家が多く所属しています。20台後半から30台前半の若い専門家の方も少なくないですが、業務等で関わる中で、これらの方が庁内外の関係者から頼りにされている姿を見て素直に憧れの感情を抱く一方で、こうした人材の中で活躍していくために、私自身も何かしらの専門性を身につけていきたいという思いも徐々に生まれてきました。
私は、学部生時代にも司法試験を受験したことがあったものの、当時は合格には程遠く、金融庁に採用された後も目の前の職務に邁進して参りましたので、何年かは六法に関する勉強から遠ざかっていましたが、上記のような思いから、改めて司法試験に挑戦しようと決意し、本学の未修コースを受験いたしました。

広報委

実際、本学に入学され、授業を受けられて、いかがでしたか。

竹渕

入学当初は、同級生がとにかく素晴らしいご経歴をお持ちの方ばかりだったので、学内でどれだけの評価をいただけるかの見通しも立てられなかったというのが正直なところです。ただ、日々の授業に何とか食らいつき、既修者の同級生に混じってもそれなりの成績を残していけたことで、徐々に合格へのモチベーションが高まっていきました。

広報委

もう少し具体的にお話いただけますか。

竹渕

1年次に、偶然、中央一番前の席に座ることになりました。その時、3年間この席を守り通そうと自分自身に言い聞かせ、講義毎に何かしらの発言をしていたと思います。発言内容の正確性はさておき、やる気だけは見てもらえたのか、周りの方から声をかけていただくようになりました。こうして友人が出来て学校に来たくなる。勉強も進む。という良いスパイラルが生まれていたと思います。このような積極的な気持ちで通学できたのは、小中高大を通じてあまりない経験でした。

広報委

でも、お仕事もお忙しかったわけですよね。勉強時間はどのように確保されていたのですか

竹渕

まず、3年間通い続けるには、やはり職場の理解というものも大事だと思い、配転された部署毎に本学に通学する旨を報告し、特に、期末試験の日などは、試験開始から出席できるよう出来るだけのご配慮いただきました。
あと、「継続は力なり」を意識して、絶対「毎日」勉強するという意気込みでいました。例えば、平日は21時に授業が終わるのですが、自宅で家事などの用事を済ませた後、深夜眠くなるまで勉強をしていました。職場での懇親会があっても、終了後、勉強時間を確保しました。
他方、子供と遊んだり、ショッピングに行ったりなどのリフレッシュの時間も大事にしていました。

広報委

本学修了後、司法試験を実際に受けられて、いかがでしたか。

竹渕

竹淵1本学修了直後に受けた司法試験では惜しくも論文不合格となりましたが、その翌年度、短答式試験で比較的良い点を取れたとともに、論文式試験の各科目でも満遍なく点数を伸ばすことができ、合格点に達しました。ただ、暗記した範囲はそれほど大きく変わっていないと思います。それよりかは、典型論点における答案の型が定まり、また、より設例に向き合うことができるようになったことが勝因であると考えています。具体的には、2回目の受験準備として多くの演習問題を解きましたが、その中で、判例や学説の判断枠組みを理解し、摘示すべき事実をより正確に抜き出し評価することを一つ一つ体得していったということです。司法試験においては、第一に「覚える」ことから逃げてはなりませんが、ただ文字面を追うだけにとどまらず、一度立ち止まり、頭の中で理屈を組み立てることもまた大事なことであったと思います。

広報委

司法試験合格のために習得なさった知識や考え方は、お仕事に何か影響を与えましたか。

竹渕

すごく役立っています。先ほど申し上げたように、私は金融庁の所掌事務に関する訴訟に関する業務に従事しているのですが、例えば、行政訴訟等に関する関係部署・関係省庁との意見調整を行うのに、民事訴訟に関する理解は不可欠です。これに携わる多くの関係者が法曹資格を有していますので、いわば訟務事務における文法として、民事訴訟の原理原則は議論の当然の前提となっています(とはいえ、例えば、司法試験で必須ともいえる「弁論主義とは。」といった論証をそのまま使用するといった場面は皆無ですが。)。
また、有難いことに、たたき台レベルですが、自ら書面案を起案する機会もいただいています。要件事実論の発想は、個別法でも当然必要となりますので、この点は、本学や司法試験の勉強が大いに役立っています。ただ、書面案を作成してみると、司法試験合格者としての最後尾からスタートしたのだということを改めて実感します。
なお、銀行法や金商法といった個別法の理解に民商法の知識は欠かせませんし、政策法務にも憲法や行政法の理解は欠かせないと思います。各種ガイドラインの作成・改定に当たっても、個別条文の評価根拠事実が何かを検討する等といった形で、要件事実論の理解が生きてくるかもしれません。したがって、仮に、今後現在の職務から異動したとしても、本学での勉強は、引き続き役に立っていくと考えています。

広報委

現在、お仕事の面でも大変充実しているのですね。そのことが、まだ修習に行かれていないことと関係がありますか。

竹渕

はい。現在の仕事にやりがいを感じているということは、修習に行っていない大きな理由です。また、先ほど申し上げたように、司法試験を受験しようと思った動機も、当庁の優秀な人材の中で活躍していくことでしたので、その思いは貫徹したいと考えていますし、私の合格は、職場の理解がなければあり得なかったので、職場に精一杯恩返しをしたい気持ちも強いです。
ただ、司法試験に合格し、新たに生まれた感情もあります。日本という国では、法曹という職業に、裁判をはじめとした様々な場面で、自らの能力でもって、社会における不合理な点を変えていく可能性が与えられていると思います。いつ、どういう形になるかは分かりませんが、自分自身そうした名誉ある場面に巡り合うことを願っていますので、弁護士資格認定制度の利用なども視野に入れながら、法曹資格の取得は目指していきたいと考えています。

広報委

率直に伺いますが、本学で学ばれたことは、今の竹渕さんにとってどのようなご経験となりましたか。

竹渕

まず、さまざまな職種の方・さまざまな年代の方と知り合って、いろいろな話ができたことは、それだけで貴重な経験です。また、そういった仲間と同じ目的を持って、助け合いながら切磋琢磨できたことは、何ものにも代えがたいものでした。他方、授業では、わからない箇所を先生にすぐに聞くことができたことが、理解を深めるのに非常に有用でした。あと、授業で実務家の感覚を学ぶことができたことも、とてもよかったです。独学では合格は無理だったと思います。

広報委

最後に、後輩の筑波大学法科大学院生(入学を考えている方々)へのメッセージをお願いいたします。

竹渕

本学に入学するきっかけは人それぞれですが、司法試験に合格して現状を変えたいという思いを持っていることは、皆共通しているところだと思います。最終合格のためには、今あるその志を、法務省の掲示板で自分の受験番号を確認する直前まで貫徹する必要があります。私達は社会人である以上、保有資格より経験を重視される場面も多いですし、試験合格という肩書によってその人の人生が変わるかというと、社会人になる前の学生と比較してさほど大きくないかもしれません。しかし、仕事をしながら司法試験合格を成し遂げたという経験は、皆様自身の揺るぎない幹として、日々の仕事振りや自信に表れ、きっと皆様の人生を豊かにすることになるはずです。
数年掛かりの取組みとなりますので、その中では、様々な危機が生じるやも知れません。しかし、当初の志を忘れずに、どうか最終合格を勝ち取ってほしいと思います。

広報委

本日は、お忙しい中、誠にありがとうございました。