活躍する修了生 Vol.5

天然寺 副住職 兼 天然寺法律事務所 弁護士 齊藤善隆さんインタビュー

天然寺 副住職 兼
天然寺法律事務所 弁護士
齊藤 善隆さん
2018年3月修了
  • ご経歴
  • 2006年 早稲田大学 法学部 卒業
  • 2006年 株式会社アクセス国際ネットワーク 入社
  • 2013年 天然寺 副住職 就任
  • 2015年 筑波大学法科大学院(未修コース)入学
  • 2018年 同 修了
  • 2019年 司法試験合格
  • 2020年 司法修習(第73期)
  • 2021年 弁護士登録・天然寺法律事務所 開所

広報委員会(以下、広報委)

本日は、2015年4月に未修コースに入学、2018年3月に修了され、2回目の受験で司法試験に合格された齊藤善隆さんにお越しいただいています。まずは、齊藤さんが現在どのようなお仕事をなさっているのかお話いただけますか。

齊藤善隆氏(以下、齊藤)

私は、現在、私の地元の長野県木島平村にあります天然寺というお寺の副住職をしており、また2021年1月にお寺に併設いたしました天然寺法律事務所で弁護士として働いています。

広報委

お寺のお坊さんであり、また弁護士としても活動なさっているのですね。

齊藤

ishikawa02はい。私は、大学卒業後、民間企業に7年間務め、実家のお寺を継がなければならないことになり、地元に戻りました。そのとき、地元における問題を認識するようになり、それらを解決すべく行動したいと思ったことと、今後の自分の人生を考えて、弁護士を目指したいと思うようになりました。

広報委

それで、ロースクールを受験してみようと思われたのですか。

齊藤

はい。ただ、お寺での仕事がありましたし、勉強と仕事の両立の問題から、一般のロー・スクールに通うのは難しいと思って調べていたところ、筑波ロー・スクールは夜間および休日に授業を開講していると知って、これなら通えると思って、入学したいと思うに至りました。

広報委

では、本拠地はまた東京に移されたのですか。

齊藤

いえ、お寺の仕事もあるので、本拠地は長野のままにして、東京と長野を行ったり来たりする生活をしていました。

広報委

そうすると、お仕事もあり、かつ移動の時間も相当かかって、大変だったのではないですか。どのように、勉強時間を確保されていたのですか。

齊藤

ここは大学の制度をうまく利用させていただきました。まず、どうしても東京に行けない時はウェブでのリモートで授業を受けましたし、移動時間に授業の録音・録画を観たり聞いたりしました。また、24時間の自習室も、始発の時間まで使わせてもらったりと、いろいろ有効に活用しました。

広報委

他に、在学中大変だったことはありますか。お仕事との両立はどのようになさったのですか。

齊藤

ishikawa01在学中は、お寺の仕事も覚えなければならない時期でもあったので、なかなか勉強時間が取れませんでした。私は、法学部出身ではあったのですが、学部の時は法曹資格を取ることは全く考えておらず、ほとんど勉強もしていなかったので、純粋未修のような状態で、毎日の授業をこなすのに精一杯でした。
もっとも、お寺の仕事は季節性で、お盆やお正月に集中することはわかっていたため、事前にそれに対応できるよう準備していました。具体的には、試験直前には勉強できない可能性があると思って、授業後にしっかり復習をして理解を着実なものにしていきました。

広報委

修了後、合格まではどのように過ごされたのですか。

齊藤

1回目の受験は、漠然と過去問を解いたりしていました。見事に玉砕しました。そこで、自分の勉強方法を今一度見直して、2つの対策を取りました。一つは、1回目の受験の時は問題を解く、起案する練習が総じて足りなかったと思って、予備校の答練を受けるようにしました。もう一つは、択一の勉強が不十分であったとも思って、択一対策にも時間をとるようにしました。択一は、1回目と2回目の点数が大きく違ったので、その効果は大きかったと思います。

広報委

問題を解くことと択一対策をしたことが勝因だったということですね。勉強継続のモティベーションはどのように維持したのですか。

齊藤

1つは、合格した同期が自主ゼミを1ヶ月1度ほど開いてくれたので、それに定期的に参加することで、精神的にも勉強の面でも刺激を受けて、モティベーションを保てたと思います。あと、在学中にできた、さまざまな人との出会いが、司法試験合格およびその後の進むべき道を明らかにし、支えてくれたように思います。

広報委

具体的にはどういった関わりですか。

齊藤

一つは、最高裁判事をなさっていた山浦先生の講演会が筑波ロー・スクールで開かれて、そこで伺ったお話です。山浦先生はいわゆる「町弁」をなさっていた方で、その時のご経験や最高裁判事としてのご経験、またなぜ法曹を志されたのか等をお話しくださったのですが、それを伺って、今後自分が進むべき田舎の弁護士としての道がクリアーになったように思っています。あとは、同期の存在も非常に心強く、自分の背中を押してくれました。さまざまなお仕事をしながら、そしてものすごく忙しい中、それでも法曹資格をとるという目標に向かって邁進している同期がいたことが、自分も将来をしっかり見据えてやらなければ、というモティベーションを与えてくれました。

広報委

そうでしたか。では、今、合格なさって、修習を終えられ、お寺に法律事務所を併設なさって、どのようなお気持ちですか。

齊藤

まだ開業して2ヶ月しか経っていないので、やっとスタート地点に立てたという感じです。これから地域の方の信頼を得ていかなければならないですし、どういう形で地域に根付き、法的サービスを提供するのか、また、お寺の仕事とどのように両立して行くのか、手探りで模索していかなければならない、と思っています。

広報委

具体的に、どのようにやっていきたいと考えていらっしゃいますか。

齊藤

地元は司法過疎の地域なので、弁護士がまわりにいません。地元の方も、どういったことを弁護士に依頼するのか、そもそもよくわからないといった状況にあります。そのような中で、法律相談をしてほしいというお話をいただいているので、まずはそれを通じて、地元にどのような問題があるのか知りたいと思っています。その上で、法的に解決できることがあるなら、それについてお手伝いをさせていただきたいと思っています。
あと、地元のように司法過疎の地域では、特に、弁護士というとハードルが高いように感じられてしまいますので、私は、地域の方々が安心して暮らせるように法を使うのが弁護士であるということをお伝えしながら、ホームロイヤーのような身近な存在として、そのハードルをまずは下げることから始めたいと思っています。

広報委

お寺でのお仕事と法律を学んだことの相関関係について少し伺いたいのですが、法律を学んだことがお寺の仕事に役立った、あるいはお寺の仕事の考えが法律を学ぶ時に役立ったこと等、何かありますか。

齊藤

ishikawa02お寺でのお仕事も、人間の営みなので争いもありますし、法が関わるべき場面は多くあります。そこで、法を学んだことで、基準を示して争いを解決に導けることには意義あることと思います。
逆に、仏教の考えが法律を学ぶ時に役立ったか、というとそういうわけでもないのですが、仏教の基本的考えは「人それぞれ」というもので、それぞれ異なる個人がみな幸せになる道を見つけようというものなので、それを実現する手段はまさに法だと思います。その意味で、両者は密接に関係していると思います。

広報委

率直に伺いますが、本学で学ばれたことのよかった点と改善すべき点は何ですか。

齊藤

よかった点は、基礎から実践まで、それぞれ必要十分な内容を教えていただける制度を用意していただいていたことです。特に私はチューターゼミを多く利用させてもらって、基礎を叩き込むことができました。法律をほとんど勉強したことのない自分にとっては、いい環境だったと思います。あと、先ほども申し上げましたが、社会人経験のある同期の存在もとてもよかったです。勉強のモチベーションだけでなく、私の人生という意味でも、大変刺激を受けました。改善してほしい、というか、カリキュラム上仕方ない点なのかもしれませんが、問題を解く機会がほとんどないので、そこはもっと在学中に自分で対処すべきだったと思います。

広報委

最後に、後輩の筑波大学法科大学院生(入学を考えている方々)へのメッセージをお願いいたします。

齊藤

予備試験合格者の合格率が上がってきているので、ロースクールに行く必要はないのではないか、と思われている方がいらっしゃるかもしれませんが、私はそのようなことはないと思っています。ロースクールでは、授業で法的思考を取得するための基礎をしっかり教えてくれ、それだけで試験に必要な知識は十分学べます。あとは、それらを自分なりに工夫して着実なものにして、試験に向けた対策をとるだけです。そして、合格した後も、ロースクールで固めた基礎は必ず役立ちます。また、合格のためにはモティベーションの維持が非常に重要なわけですが、それも、ロースクールに行くことが有用と思います。刺激的な志高い仲間や素晴らしい先生がいるからです。
みなさまの合格を心から祈念しています。

広報委

本日は、お忙しい中、誠にありがとうございました。