令和6年11月司法試験合格 S.I.さん

2023年 4月 筑波大学法科大学院既修者コース入学
2024年11月 司法試験合格(在学中合格)
2025年 3月 筑波大学法科大学院既修者コース修了

1.法科大学院入学の経緯

法学部在学中は一度ロースクールの入学を目指しましたが、リーマンショック後による就職難などの状況を悲観し、ロースクール受験から早期に撤退し、地元の自治体に就職し、地方公務員となりました。
その後、訴訟にかかわる部署へ異動することとなり、毎日の弁護士と業務上のやり取りをする中で、法学の知識に欠ける自らの力のなさを痛感するとともに、法律家の仕事の魅力を目の当たりにして、もう一度、法律家を目指してみようと決意をしました。
当初は、予備試験経由での司法試験受験を目指しておりましたが、フルタイム勤務の社会人では時間の制約から予備試験の合格は、ある程度の期間が必要であり、また、社会人受験生の合格率が極めて低い現状においては、かなり厳しい道であると感じていました。加えて、予備試験合格に要する期間により年齢を経ることへの焦りもあり、一年でも早く受かるにはどうすればいいかと悩んでいたところ、在学中受験制度が開始されることを知り、この制度を利用すれば予備試験合格と全く変わらない期間で司法試験を受験することができることから、ロースクールの入学を決意するに至りました。
結果として、予備試験に合格するのと変わらないスケジュールで司法試験に合格をすることができましたので、筑波大学法科大学院に入学したことは正解だったと思います。

2.学生生活

私は入学に伴い大学から徒歩圏内の場所に引っ越すことにしました。そのため、筑波大学法科大学院ではオンラインによる講義の受講が可能ではありましたが、私は基本的にオンサイトで講義を受けることにしました
大学の近くに引っ越しをしたことにより自宅では一切勉強をすることはなくなり、学習をするのは専ら大学の自習室か通勤電車内となりました。
自習室は風景などが見えないので、そのため集中力を削がれることなく、修行のように勉強に打ち込めることがでたので、私自身としては、自習室がなければ司法試験の合格はなかったといっても過言ではないと考えています。年末年始も含めて空いている時間のほとんどを自習室で過ごしました。
そして、学習の場所を自習室中心とすることで、ロースクール入学前の予備試験受験時より可処分時間は変わらないもののモチベーションの維持と学習のルーティン化により1週間の平均学習時間が増加したので結果として、大学の徒歩圏内へ引っ越しをしてよかったと思いました。
授業がない平日は1日平均4~6時間の学習時間(内訳は通勤中の徒歩と電車で2時間、昼休み30分、自習室2時間30分)を確保し、休日は10時間程度を確保し、1週間の合計で35~45時間を目安に学習時間を確保するように心がけておりました。

既修者コースが在学中受験するには、既修1年次の段階で演習科目である総合演習科目の履修をしなければならず、入学するやいなや実践的な授業についていかなければならず、これはとても大変ではありましたが、優秀答案を見ることができる機会や自らが起案した答案の誤りに気付ける実践的な内容であり、これらの授業でかなり力が付いたと感じました。

ロースクール入学前は予備校教材などを利用した自学自習が中心でしたため、ロースクールの授業では予備校教材で学んだ内容が否定されてしまい、一から学習をし直さなければならないのではないかと不安でしたが、これは杞憂でした。むしろ、ロースクールの授業を受けることでよりこれまでの理解の誤りを把握することで、理論的により深い理解をすることができました。そして、講義の内容を踏まえてこれまで自分が使ってきた論証集の表現を適宜修正したり、作り直したりすることで、司法試験の論文の実力向上に直結したものと考えております。
実際、論文答案を起案するという学習を始めたのはロースクール入学前の3~4か月前でありましたが、司法試験直前の模試で論文上位約1割の成績をとることができるところまで成長できたことを考えると、ロースクール在学中の学習によって論文の実力を飛躍的に伸ばすことができたと考えています。

3.ゼミ

私は、既修1年次に、同学年である未修2年次の方々が既に行っておられた民法の自主ゼミに途中から参加させていただきました。その後、既修1年次の年末ごろから順次、刑法、刑事訴訟法、民事訴訟法を拡大し、ゼミに参加させていただきました。
自主ゼミの良さは、司法試験合格という同じ目標を持つ仲間と切磋琢磨しながら勉強することができること、時間が限られている社会人が過去問を起案するという機会を強制的につくることができること、そして非常に優秀な先生方の心強い指導にあります。
一番多いときは1週間のうちに4回のゼミを実施したこともあり、時間がない社会人受験生が4通の過去問を起案するということは自主ゼミがなければ、絶対にすることはできなかったと確信しています。自分ひとりだけではここまで強い負荷をかけることでなかったので、自主ゼミのおかけで相当実力がついたと考えています。
また、自主ゼミ以外にも行政法、商法、経済法はチューターゼミ・個別ゼミで過去問を演習し実力をつけることができました。
このように、筑波大学法科大学院には、司法試験合格に必要な環境が整っているといえます。
お忙しいのにも関わらず貴重なお時間を頂戴し懇切丁寧な温かいご指導を下さった先生方については本当に感謝してもしきれません。また、一緒に勉強をしてくださり心の支えとなったゼミの仲間の皆様方にも心の底より深く感謝申し上げます。
皆様がいなければ、わたし一人の力では司法試験を合格することはできませんでした。
また、一生忘れることができない霞が関の法務省の掲示板での合格発表の瞬間に立ち会ってくださった仲間にもこの場を借りて心より深く感謝申し上げます。

4.最後に

仕事と司法試験の勉強との両立は本当に大変なことであり、そのようななかで目標に向かう筑波大学法科大学院の学生は本当に尊い存在だと思います。筑波大学法科大学院の学生は各分野での一線でご活躍されている方が多く、そのような方々が法曹資格を得て活躍することの社会的意義は非常に大きいと考えています。そのような様々な分野でご活躍されておられる優秀な方々と出会えたことも、筑波大学法科大学院に入学してよかったと思う理由の一つです。
そして、仕事のある社会人が司法試験を目指すことは大変なことにほかなりませんが、このような社会人が司法試験合格するため環境を提供してくれるのは筑波大学法科大学院のほかにはないのではないかと考えております。
司法試験合格を目指す社会人の方々におかれましては、予備試験経由ではなく筑波大学法科大学院経由での司法試験受験を選択に入れていただくことを強くお勧めいたします。
最後となりますが、筑波大学法科大学院の先生方、一緒に勉強をしてくださったゼミの仲間たちに心より深く感謝申し上げます。また、司法試験を受験される皆様が合格されることを心よりお祈り申し上げます。

以 上