鈴木 猛史さん

  • 1981年東京大学経済学部卒
  • 地方公務員
  • 2011年入学7期生
  • 2014年司法試験合格

 1 はじめに

私は、経済学部出身で、市役所に勤務しながら7期生として本学に入学しました。平成26年3月に本学を修了し、同年5月の司法試験に合格することができました。

30年ほど前、弁護士を志し、働きながら旧司法試験を何度か受験しましたが、やがて仕事も忙しくなったことから諦め、地方公務員の仕事に専念してきました。その後、自分の仕事時間を、ある程度コントロールできる部長職、理事職となり本学に入学できたことから司法試験に再チャレンジしました。

 2 筑波ロースクールでの学生生活

長期間法律学とは離れており初学者同様の学力なので、在学中は授業の予習復習で手いっぱいでした。遠距離通学のうえ、仕事、子育て、親の介護…さまざまな顔をもつ社会人として、とにかく忙しい3年間でした。

先生方の愛情あふれるソクラテスメソッドと実践的な試験によって、他では経験できない緊張感の中で私の学力は3年間で飛躍的に向上したと実感しています。筑波ロースクールの授業、特に総合演習は各科目とも充実しており、司法試験受験に直接役立ちました。また、試験科目以外にも、模擬裁判、法曹倫理などの実務科目あるいは、金融法、地方自治などの先端科目もそれぞれ魅力があり、今振り返っても心ときめく3年間でした。

授業では、司法試験を念頭に試験科目で苦手科目・苦手分野をつくらないように心がけました。
期末試験でも特定科目に集中し優秀答案を書くことより、どの科目でも一応の水準の答案を書けるようにすることを目指しました。

授業は頑張ってほぼ出席しましたが、時間的制約からチューターゼミは行政法と労働法のゼミに参加しただけでした。

授業が休みの期間は本来司法試験対策のための大切な期間ですが、正直雑事に振り回されていて十分な時間は確保できませんでした。それでも3年の夏休みまでに全試験科目について基本書にコアカリキュラムの項目を書き込み、理解できているか再チェックすることで、それまでの授業の総復習ができ、これが司法試験対策のベースとなりました。

 3 私の受験対策

時間の足りない社会人受験生にとっては、優秀答案を書くことは至難の業ですが、一応の水準の答案を7科目そろえられれば、必ず合格できると考えました。

そのため、司法試験に向けたインプットとしては、各科目をコンパクトな資料にまとめ、それを繰り返し回すという感覚が大切であると考えます。インプットはロースクールの授業の復習として、コアカリキュラムなどの基礎的な論点を確実におさえること、基本的な判例の判旨事案の概要を理解することで十分でした。

アウトプットとしては、本試験の論文過去問を比較的長い勉強時間が取れる休み期間に答案構成をしたうえで、出題趣旨、採点実感を熟読しました。また、本試験の出題形式や試験時間に慣れるため3年の秋から本学の授業と併行して予備校の答練を受けました。公開模試は本試験と同じ会場で受験し、本番のシュミレーションを行いました。

本試験で求められているのは、事案の処理能力です。具体的には、

①法的三段階論法を用いて事案の解決を図ること
②条文を重視し条文からスタートすること
③事案に現れた有利な材料も不利な材料も使い事実の総合評価を試みること
④制限時間内で、事案の解決に向け一貫した論理を展開すること

などです。
試験日当日を除いては平日仕事を休むことはできませんでしたが、直前まで、インプットとして基礎的な論点の読み込み、アウトプットとして過去問の答案構成を何度も繰り返しました。

 4 これから受験される皆様へ

受験環境が厳しくなることも予想されますが、それでも旧司法試験に比較すれば合格しやすいことに変わりはありません。穴をなくし不良答案との評価を受けないことがいっそう重要になりますので、着実に基礎力の土台を積み上げることをお勧めします。

また、さまざまな情報に惑わされず自分の学習ペースを守ることが何より大切です。本学の学生は学力も学習環境もまちまちですので、クラスメイトと比べ成績が振るわなくても焦らないことです。「合格には1日最低10時間の勉強が必要」とも言われますが、私の勉強時間は直前期でも平日平均3時間、土日8時間程度です。管理職としての立場もあり、お酒の付き合いも本試験直前まで続けていました。

司法試験は、試験で求められているものを正しく理解し、筑波ロースクールを活用して効率的に勉強すれば、時間のない社会人でも必ず突破できる試験です。頑張ってください。