A.Oさん

8期生として平成24年度入学
9期生と共に平成27年度修了
平成28年司法試験合格

1.はじめに
 私は,4年制の大学を卒業後(教養学部),8期生として本学に入学しました。途中、職務の都合により休学期間を取得しながら9期生とともに修了し,仕事を継続したまま司法試験に一度の受験で合格することができました。受験生期間は、家よりも学校に長く居るのではと警備員さんに心配されるほど学校で過ごしていましたので、ここでは、主に筑波ロースクール(以下「本学」と言います。)における過ごし方について書かせていただこうと思います。

2.筑波ロースクール生活について
(1)社会人が学習に打ち込める環境
 本学の建物には、社会人学生が講義終了後も遅くまで勉強することができるよう、24時間使用可能な自習室やPC室、ラウンジが用意され、しかも警備員さんが24時間常駐して下さっている環境のため、安心して勉強に集中することができました。また、建物の他階では他専攻の社会人学生も夜遅くまで論文作成等に励んでおり、良い刺激を受けながら頑張ることができました。
(2)1年次について
2年次からの演習講義においては、1年次の正確なインプットを前提とした演習形態が中心となりますので、1年次に知識をどれだけ正確に自分のものにできるかが重要です。実際、講義でも試験本番でも、100の曖昧な知識よりも10の正確な知識の方が自分を助けてくれます。特に、仕事をしていて時間の少ない私達社会人は、知識の量よりも質で専業学生と勝負することが求められます。
ところで、私は法学部出身ではないため、特に初見であった訴訟法等において、インプットにはとても苦労しました。純粋未修者が、既修者のクラスメイトとの差を感じてしまうこの時期特有の辛さがあります。しかし、1年次においては、先生方も未修者に配慮した講義の進め方をして下さいますし、質問をどんどんしやすいのもこの時期です。未修者の方は、1年次が踏ん張りどころと思って頑張ると良いと思います。
(2)2年次について
2年次は、各科目において割当発表が増えるなど演習講義が始まり、自らの意見を組み立て、発信する機会が多くなります。そのため各科目の予習がとても大変で、睡眠時間の確保が常に課題の時期でした。
なお、私は2年次途中において、職務の都合により講義への出席が困難な時期がありましたので、休学期間を取得しています。
本学では、休学をする場合には、休学前と復学前に担当教員と面談をする制度となっています。面談では、休学期間の過ごし方、復学時期の相談、復学に向けた勉強プランの立て方等を、学生の個別の状況を踏まえて相談に乗って下さいますので、安心して休学をすることができ、スムーズに復学をすることができました。社会人学生にとって、転勤等の職場環境の変化は不可避ではありますが、対応する制度が整っていることは、ありがたかったです。
(3)3年次について
3年次は、実際の起案を長時間で行う総合演習が始まります。また、模擬裁判もあります。模擬裁判は、実際の法廷を模したセットのある大教室において、クラスを裁判官、検察官、弁護人(民事の場合は裁判官、原告側弁護人、被告側弁護人)にチーム分けして行われます。毎週の模擬裁判に向けて仲間と時間を合わせて集まって行う準備書面や判決書の作成は、それなりに苦労しましたがとても楽しく、また実定法だけでなく手続法の理解度を確認する良い機会になるなど、大変有意義なものでした。

3.司法試験の受験にあたって
(1)法的三段論法を早めに意識
司法試験本番において、法的三段論法が重要であることは間違いないです。私が後悔しているのは、法的三段論法を意識し出したのが3年次からと遅かったことです。これは訓練なので、これから勉強を始める皆さんが1年次から法的三段論法を意識したインプット・答案練習を継続していけば、本番を迎える頃には体得し、スムーズに合格できる気がします。
(2)条文を大切に
 私は在学期間を通して教科書、判例百選、参考書を多く読みましたが、最後に回帰したのは条文そのものでした。司法試験本番で頼れるのは、自分の頭と司法試験用六法しかありません。常日頃条文に親しんでおき、どのあたりにどの条文があったかを微かにでも記憶していると、本番では探索ではなく思考に時間をより多く使うことができます。もちろん短答式対策にも有効です。したがって、早いうちから条文を意識しておくことが大切です。
(3)社会人受験生として ~リフレッシュも大切に~
司法試験に向けて、大学院の講義以外の時間、特に授業が終了する3年次の1月から本番までの半年間をどのように緊張感をもって過ごすかは、試験の合否を左右しますので、とにかく自分なりのスタイルを確立することが大切です。
本学には、法曹専攻の学生が卒業後も自習室、PC室、図書館を使える法曹学修生という制度があり、私はこの制度を利用して平日は日付が変わる頃まで、土日は朝7時頃から夜まで勉強をしていました。受験生として自習室に長時間籠っていると、気持ちが塞ぎかけることもありましたが、休憩のたびに軽く散歩をしては頭と気持ちを休め、リフレッシュして勉強に励みました。本学徒歩0分の教育の森公園には、平日はお弁当を広げる人々や犬を連れた人々が集まり、休日は少年野球や家族連れで賑わっています。また、毎年司法試験直前期である桜の季節には、素晴らしい桜吹雪の景色が広がり、教室やラウンジの窓からも眺めることができます。

4.おわりに
 私は受験中も合格後も自治体職員の仕事を続けることが前提でしたので、予備試験ルートも選択肢としては考えられました。しかし、私が本学を目指したきっかけは、仕事をする中で必要性を感じた「法律を用いた問題解決能力」を身に着けたいと考えたことにありました。在学中、先生方及び多様な職業のバックグラウンドを持つ同期との議論を通して、法律知識だけではなく、法的に重要な事実を選び出して把握・分析すること、法原則や条文を根拠として合理的な法的理論構成を行うこと等の思考方法を身に着けることができ、充実した時間を過ごすことができました。皆様も、司法試験合格を目指される理由は様々だと思いますが、ぜひ、自分一人の勉強では得ることのできない時間を過ごしていただけたらと思います。
最後になりますが、ここまで支えて下さった本学の先生方、先輩方、同期、家族及び職場の方々に心の底より感謝を申し上げるとともに、これから挑戦される皆様の成功をお祈り申し上げます。