奥山先生に聞く ――よりきめ細やかな教育の提供を目指して――

司会 当専攻における学修相談や教育指導,チューターゼミなどの補助教育の充実のため,助教として,本年より奥山先生に来て頂くことになりました。簡単に自己紹介をお願いできますか。
奥山 インタビュー写真(奥山) (2)
私は,東京大学工学部建築学科を卒業後,建築紛争に興味を持ったので,一橋大学法科大学院の未修者コースに入学しました。3年間で修了した後に司法試験に合格。現在は弁護士となって3年目を迎えました。
当専攻では,平成26年から,非常勤講師として既修者1年民法のチューターゼミを担当しておりました。
司会 まず,チューターとして既に当専攻の院生を教えてきて頂いているわけですが,教える側として,奥山先生はどのようなことに重きを置かれる予定ですか。
奥山 はい。私はまったくの未修者から勉強を始めて最終合格に至ったので,3年で合格を目指す難しさを身をもって知っています。それだけに,限られた時間で合格レベルに達するための勉強の工夫など,経験に基づいた実践的なアドバイスができると考えております。
それに,私はつい4年前まで法科大学院生でしたので,院生の皆様と比較的年齢が近く,気軽に何でも話して頂ければいいなと思います。経験上,特に未修者ですと,担当教員に聞くのがためらわれるような初歩的な質問も多いと思いますので。
司会 奥山先生はご自身の受験経験を振り返って,どんな勉強方法が効果的だったと思いますか。
奥山 まずは,1日でも早く司法試験の過去問を解くということです。
結局は,過去問が求めている水準と,現在の自分の実力との差を,試験当日までにどれだけ埋められるかの勝負ですから,そのゴールを見定めないことには勉強の方向が決まるはずがありません。「書けるようになってから書こう」だと,あっという間に1年や2年が過ぎ去るので,要注意です。
それから,試験当日までの数年間の長期計画,現在から3か月程度先までの中期計画,今週1週間分の短期計画をそれぞれ立てて,「何月何日何時までにこれができているように」を明確にすることも,モチベーション維持に役立ちました。
 あとは,法学は議論することが大切だと思います。
司会  議論というと,他の院生と議論することも多かったのでしょうか。
奥山 はい。一橋では,早い段階から少人数で院生が自主的にゼミを組んで,持ち寄った事例問題の答案を書き合い,見せ合って,議論するという文化が当たり前のように根付いていました。ですので,私を含め,ほとんどの院生が何らかの自主ゼミに属していました。自分の文章表現がわかりづらくないかを客観的にチェックしてもらえて,しかも他人の答案の長所を盗めるので,非常に勉強になりました。
司会 当専攻では,そのような自主的なゼミ以外にも,チューターゼミが開学当時から行われており,人気も高いのですが,助教として,どのような新味を加えることを考えていますか。
奥山 昨年までも本課授業の進行とチューターゼミの進行を有機的に連動させてきているとの話は聞いていますが,今年からさらに連動性を強めて,学習効果を高めていきたいと思います。
例えば,1年生では,各科目について,純粋未修の初学者に対して本課授業の予習や復習を行う「αゼミ」と,授業内容をひと通り理解できる中級者を対象にして,授業を掘り下げた実践的な内容を扱う「βゼミ」とを並行して開講し,学生が自身のレベルに合ったゼミを選択できるようにしました。いずれにしても授業の理解とその復習が大切なので,どちらのゼミをとっても,1年生修了時には,同じレベルの理解度に到達できるようにしたいと思います。
なお,2年生以上も,チューターゼミの内容を本課授業の進度に合わせたものにブラッシュアップして,効果的な知識獲得と起案ができるよう,教材の選定など調整していきます。
司会  1年修了時に共通到達度確認テストを実施することが計画されていますが,これに向けた1年未修者の教育はどのように考えていますか。
奥山 1年生に対しては,2年前から民法で,授業の進行に合わせて授業外で肢問を出題してこれを院生に解かせるようにしていましたが,これは知識の確認と定着に役立っています。これはこのままの形で,共通到達度確認テストへの準備として活用します。憲法と刑法については,新旧司法試験及び予備試験の短答問題の中から,特に1年生で理解しておくべき重要な肢問だけを厳選した自習用教材を作成し,共通到達度確認テスト対策をバックアップします。
いずれにしても,1年はあっという間に終わるので,地道に理由をつけて問題を解いていくクセをつけていってもらいたいと思います。
司会 そのほかに,当専攻における教育補助につき,どのようなことを考えられていますか。
奥山 司法試験を見据えた学修という観点では,昨年から見ていて,目標設定が必ずしも適切にできていない方も多いように思いました。
具体的には,本試験までの残り日数を考慮しつつ,学修進度や自身の習熟度に応じて段階的に目標を上げていって合格水準まで登りつめる,というプロセスがやや不十分だと感じました。とはいえ,未修者が自力でこれを行うのは必ずしも容易ではありません。
そこで,私は,院生の皆さんの習熟度に応じて,個々の段階において目標とすべき教材や演習問題,またその目標の期限等を,具体的に提案したいと考えています。
そういったこともあるので,是非,気軽に学修相談に来て頂きたいと思います。
司会 有難うございました。助教を迎えることは初めてですので,是非,新風を吹き込んでください。